207 / 454

第207話

今日は景は午後からフリーで、明日の夕方からまた仕事があるけど、それまでは一緒にいられる。 やっと会える事にドキドキして、ほとんど熟睡出来ないまま朝を迎えていた。 昨日電話をした時には、泊まりたいなんて事は言われなかったけど、きちんと準備をしていた。昨日薬局に行って、ローションとゴムを買ってきたのだ。今、ソファーベッドの下に仕込んである。 今日はまず景がこの部屋に来てくれて、その後は車で出掛けて映画を観る予定。 ご飯は修介の好きなものでいいよって言ってくれた。いつも自分より俺の事を優先してくれる、優しい人。 部屋を片付けていると、あっという間に景の来る時間になってしまった。 食器を洗っていたら、インターホンが鳴ってビクッとする。 「あっ!待っ、て……」 手を拭いてからドアホンの画面を覗く。 そこには紛れもなく、この間一夜を共にしたあの彼が立っていた。 鍵を回してドアを開ける。 油断していた。 綺麗なその人と、いきなり目が合ってしまったのだ。 「……久しぶり」 あ、やばい。大好き。 久々に見ても、安定のかっこよさ。 胸がドキドキする。初めて景を見た時みたいだ。 「あっ、うん。久しぶり。ありがと、来てくれて」 「ごめんね、ちょっと早く着いちゃったけど大丈夫だった?」 「ああ、大丈夫。じゃあどうぞ。言うとくけど、景ん家と比べんといてな。めっちゃ狭いで」 「そんなの気にしないよ。これお土産」 景は俺に紙袋を手渡しながら、玄関のドアを閉めた。お邪魔しますと言いながら、帽子を取ってコンバースの紐を解いて脱ぎ始める。 俺はさりげなく景の持ち物を確認した。 今日はいつものリュックは背負っていない。 財布とスマホはその薄いトレンチコートのポケットの中か。 どこからどう見てもお泊りセットなんて持ってきていない様子だ。 あれ。やっぱり今日はしないで帰っちゃう予定? で、でも、俺は泊まってって欲しいよ?と心の中で呟きながら、手渡された紙袋の中を覗き込んだ。 「何これ?」 「ちょっとした和菓子」 「へぇー、ありがと」 手土産まで持ってきてくれるなんて、景は本当に抜かりがない。 景は中へと入った途端、ぐるっと部屋を見渡した。 裸を見られているようでなんだか恥ずかしくなる。

ともだちにシェアしよう!