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第207話
今日は景は午後からフリーで、明日の夕方からまた仕事があるけど、それまでは一緒にいられる。
やっと会える事にドキドキして、ほとんど熟睡出来ないまま朝を迎えていた。
昨日電話をした時には、泊まりたいなんて事は言われなかったけど、きちんと準備をしていた。昨日薬局に行って、ローションとゴムを買ってきたのだ。今、ソファーベッドの下に仕込んである。
今日はまず景がこの部屋に来てくれて、その後は車で出掛けて映画を観る予定。
ご飯は修介の好きなものでいいよって言ってくれた。いつも自分より俺の事を優先してくれる、優しい人。
部屋を片付けていると、あっという間に景の来る時間になってしまった。
食器を洗っていたら、インターホンが鳴ってビクッとする。
「あっ!待っ、て……」
手を拭いてからドアホンの画面を覗く。
そこには紛れもなく、この間一夜を共にしたあの彼が立っていた。
鍵を回してドアを開ける。
油断していた。
綺麗なその人と、いきなり目が合ってしまったのだ。
「……久しぶり」
あ、やばい。大好き。
久々に見ても、安定のかっこよさ。
胸がドキドキする。初めて景を見た時みたいだ。
「あっ、うん。久しぶり。ありがと、来てくれて」
「ごめんね、ちょっと早く着いちゃったけど大丈夫だった?」
「ああ、大丈夫。じゃあどうぞ。言うとくけど、景ん家と比べんといてな。めっちゃ狭いで」
「そんなの気にしないよ。これお土産」
景は俺に紙袋を手渡しながら、玄関のドアを閉めた。お邪魔しますと言いながら、帽子を取ってコンバースの紐を解いて脱ぎ始める。
俺はさりげなく景の持ち物を確認した。
今日はいつものリュックは背負っていない。
財布とスマホはその薄いトレンチコートのポケットの中か。
どこからどう見てもお泊りセットなんて持ってきていない様子だ。
あれ。やっぱり今日はしないで帰っちゃう予定?
で、でも、俺は泊まってって欲しいよ?と心の中で呟きながら、手渡された紙袋の中を覗き込んだ。
「何これ?」
「ちょっとした和菓子」
「へぇー、ありがと」
手土産まで持ってきてくれるなんて、景は本当に抜かりがない。
景は中へと入った途端、ぐるっと部屋を見渡した。
裸を見られているようでなんだか恥ずかしくなる。
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