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第208話

「ちょっと、あんまジロジロ見んといてよ?」 「あ、ごめん。なんか修介らしい部屋だなと思って。家具とか、僕も好きなような色合いだし。きちんと整頓されてるし、綺麗ですごくいい部屋だよ」 「ほんま?景にそう言われると嬉しいわ……」 もらった紙袋をミニテーブルの上に置いて顔を上げたら、急に手首を掴まれた。 大きな手が触れて、そのまま引っ張られて彼の胸の中へフワッと俺の身体が収まる。 「会いたかったよ。すっごく」 頬を両手で優しく包み込まれた。 景が薄目で俺を見つめながら顔を下ろしてくる。 ギリギリまで目を合わせていたけど、このドキドキに耐えられなくて先に瞳を閉じた。 その後すぐに、優しく唇を啄まれる。 唇が離れたから目を開けた。 「修介は?」 「……お、俺も、会いたかった」 そう言うと、両手でほっぺをギュッと押されてタコの口にされる。 「……にゃにふんの(何すんの)?」 「本当に?」 意外な言葉だったから戸惑った。 こんなにも俺は、景に会える事を楽しみにしていたのに。 景の手が緩まったから俺は何度も頷いて、景のシャツを掴んだ。 「えっ、な、なんで?会いたかったで?ほんまに」 「なんだか、こんなに会いたかったのは僕ばっかりな気がしてさ。それだと恥ずかしいじゃん」 俺はいつも、思っている事を言葉で伝えるのが苦手だから、うまく言えなかったりする。 誤解させないようにちゃんと伝えなければ、と焦ってしまった。 「そっ、そんな事ないで!俺やってめっっちゃ会いたかったんよ!たぶん景よりもずっと気持ちは大きいで?だってずっと忘れられないでおるんよっ?あの時のセッ……」 顔がカッと熱くなって、恥ずかしくてポスンと胸元に顔を埋める。 景はふふっと吹き出して、俺の頭を撫でてくれた。 「あの時の、何?」 「……なんでもない」 「可愛い。僕も、忘れられないよ。あの時の修介が何度も夢に出てきたし」 「え、ま、マジで……」 「ずっと、我慢してたんだから」 色っぽい言い方にゾクゾクと身体が震えたのも束の間、顎を手で持ち上げられた。 親指で唇を割られて、景はその隙間に舌をねじ込ませてくる。 「ふあ……っ、ん……」 徐々に激しいキスへと変わっていった。 上手く呼吸が出来なくて、掴んでいる手に力を込める。 会えなかった時間を埋めるように口内を貪られてから、体を離された。 「じゃあ、少ししたら出掛けようか?」 「う、うん……」 これ以上してたらヤバかった。 いや、もう結構ヤバイけど。 熱よ、おさまれと思いながら何気ない会話をして、しばらくしてから家を出た。 今日は二人の時間を楽しむんだ。そう張り切って。

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