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第230話
景の分身……。
俺はニヤリと笑うと、景は思い出したように体を離して胡座をかいた。
「そうだ。修介、石倉 猛って俳優、知ってる?」
「あ、うん。この前景と一緒にドラマ出とった人やろ?」
「そうそう。あと、依田 桜理って人は?」
「よだ、おうり? うーん、なんとなーく聞いた事あるような無いような」
「桜理は舞台が多いから知らないかもね。僕、その二人と特に仲良くしてるんだ。この前会った時に、今度修介の事を紹介してって言われたんだけど、どう思う?」
「えっ、紹介?」
紹介、と聞いて怯んだ。
まさか景、男の俺と付き合ってるって言ったのか。
「来月の半ば、芸能関係者で集まる機会があるんだ。そこに連れて来たらどうかって。芸能界とは無関係の人もたくさん来るし、僕も、猛と桜理にはきちんと紹介したいなと思ってるんだ。もちろん、その二人には口止めさせるし。どうかな?」
「あー……」
「修介がもしそういう場が苦手だったら、ちゃんと言って? 無理して合わせなくていいから」
考えた。
そういう人の多いところ、本当は得意じゃないんだけど、石倉 猛って俳優、実は好きなんだ。
演技も上手で、テレビで見せる顔は明るくて、饒舌で。
まさか景が友達だったなんてビックリだけど、その集まりに行けば会えるって事だよね?
そう思うとなんだかワクワクしてしまった。
ヘラっと笑うと、景は吹き出した。
「何その顔。ごめん、付き合ってるって勝手に言った事、怒った?」
「あ、ううん!別にええよ。景の友達やもんね!ちゃんと挨拶しとかんとね!」
そう言うと、景は身を乗り出して少し驚いた表情をしていた。
「いいの? あぁ、良かった。そんな所行くわけないやろって言われるかなと思ってた」
「だって、石倉 猛に会いたいし!他にも有名な人沢山来るんやろ?そんなん会いに行きたいに決まっとるやん!」
「そっか。じゃあ一緒に行こう。良かった、楽しみだな。タケ、いい奴だからきっと仲良くなれるよ。桜理も歳は上だけど緊張しなくていいからね。向こうで勝手に盛り上げてくれるし、明るい奴だから。修介の事、気に入ると思うよ」
「やといいんやけどなぁ」
沈黙が流れて、見つめ合って笑うと、自然とお互いに顔を寄せた。
景は俺の後頭部を抑えて、激しくキスをする。
さっきしたばかりなのに、ちょっとやばい。
あ、もしや、二回戦?
俺は別にええよ……そう脳裏で考えていた矢先、家のインターホンが鳴らされた。
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