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第229話

景の手にはよく似合ってピッタリだけど、俺の小指には少し大きくてクルクル回ってしまう。 試しに小指から薬指に移動させてみた。 あ、これなら、ピッタリだけど……。 でもやっぱり俺の小さな手に指輪なんて似合わない。 外そうとすると、景は顔を傾けてニコリと笑った。 「見慣れないだけじゃない?修介って肌白くて綺麗だから、その色よく似合ってると思うけど」 「えぇー、ホンマー?」 もう一度手を宙にかざしてヒラヒラとさせた。 指輪自体は凄く好きだ。綺麗だし。 赤く光るルビーは小さくてもきちんと存在感があって。 景がいつもしてる指輪を今俺がしてるんだ……と、その輝きを見る度になんだか嬉しくて微笑むと、景はこちらに手を伸ばしてきて、俺の髪を梳いた。 「修介にあげるよ、それ」 「えっ?」 この指輪を、俺にくれる? 「いやっ、ええよ。景のお気に入りなんやろ?それにこんな高そうなやつもらわれへんよっ」 「お気に入りだから修介に持っていて欲しいんだ。それを見れば、僕の事思い出してくれるでしょう?僕の代わりって事で、心の拠り所になれればいいな」 右手の指輪に視線を移す。 景の代わり……。 こんなの無くたって、景の事なんていつでも頭にあるけど。 「それ、幸運を呼ぶ指輪なんだよ。不思議なパワーを持ってて、今ある不安が無くなって、たちまち素直になれちゃう、魔法の指輪」 「えっ、そうなん?」 「いや、嘘だけど」 嘘かい。 いや、でも嬉しい。 景のパワーやオーラを吸い込んだ最強の指輪じゃないか。 確かに、会えなくて寂しい時にこれを見れば、気持ちは随分と和らぐのかもしれない。 景は頭を撫でてくれる。 俺はもう受け取る気満々になっていたけど、何度も景に確認して、ありがたくもらう事にした。

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