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第282話 side景

「宮崎さん、お疲れ様です」 「お疲れ様。ごめんね、遅れちゃってー」 宮ちゃんは詩音のマネージャーであろう人物と楽しそうに会話をしている。 僕は宮ちゃんの後ろから覗き込んで、すぐ横に座る詩音を盗み見た。 この中で一人だけ、強烈なオーラを放っている。 サラサラの髪に、柔らかくて優しい雰囲気の、あどけなさが残る顔立ち。 宮ちゃんは詩音は僕に似ていると言っていたけど、僕はあまりそうは思えなかった。 ただ黒髪で、服装が全身黒だからって理由じゃないのか? 詩音は宮ちゃんに挨拶をしてニコッと笑う。 その頬には片えくぼができていた。 あ、でもこの笑い方。少しだけ僕に似ているかもしれない。 「あ、宮崎さん、先に始めてていいそうですよ。他の方は後から来るって連絡が入ったので」 「ああ、そうなんだ!じゃあぼちぼち始めちゃおうか」 僕と宮ちゃんは、詩音たちが座る前のテーブルに腰を下ろす。 と同時に、詩音が興奮した様子でこちらに身を乗り出した。 「あの、初めまして!Bプロダクションの日高詩音です!この度は、藤澤さんと共演出来て、本当にうれしく思っています!至らぬところが多々ありますが、期待に応えられるよう精一杯努力しますので、どうぞよろしくお願いしますっ!」 いきなりの入社初日の新人サラリーマンのような挨拶に笑ってしまった。 でも、僕もきっと昔はこうだったのかもしれない。 全力で突っ走って、がむしゃらで。 周りのスタッフが、詩音をクスクスと笑った。 景、泣かすんじゃないぞ、と言う声も聞こえた。 「……藤澤 景です。よろしくね」 シンプルにそれだけ言うと、詩音は耳まで赤くさせていた。

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