370 / 454

第370話

ドキドキして、胸が高鳴って、不安と緊張と期待が入り混じった訳わかんない感情が一気に押し寄せて、指先が震えていた。 景に会える。ここに、景が来てくれる。 景に貰った指輪と、スマホの画面を何度も見比べた。 来る予定の時間は少し過ぎている。 ソワソワして、何も手に付かず、ただひたすら座って待っていた。 そしてついに、車の排気音が窓の外から聞こえてきて、アパートの前で停まったのが分かった。 本当に来てくれたんだ。 それだけでまた泣きたくなった。 今回の涙は、悲しく辛い涙じゃなくて、嬉し涙だ。 インターホンを鳴らされる前にドアを開けると、その向こう側には、ずっと会いたかった、夢にまで見た彼がいた。 目と目が合う。 想像していたよりもやっぱりずっとずっとカッコよかった。 なんだか痩せた?やつれた? でも、ちゃんとトレーニングはしてたのかな。 肩とか腕は、七分袖のTシャツに隠れていても分かるくらい、ちゃんとがっしりしてる。 一瞬でそんな事を考えていたら、景は素早く俺の肩を押して玄関の中に入ってきた。 ドアがちゃんと閉まる前に、景は俺を壁に押し付けて、強引に深く噛むようなキスをした。 すごく熱かった。 唇が、顔が、体が。 キスをしながら、景がドアノブを背後で引いたからドアがパタンと閉じる。 それと同時に、素早く景の片手が俺の後頭部に回されて、グッと押さえつけられた。 頬に手を添えられて、何度も角度を変えながら口内を貪られる。 少し荒々しいキスを一旦やめて、肩を押されて身体を離された。 羞恥のあまり俯いていたけど、景は俺を上からじっと見つめているのが分かったから、さらに恥ずかしくなった。

ともだちにシェアしよう!