400 / 454
第400話 side桜理
店を出ると、景は振り返った。
「この間はごめんね。勝手に電話切っちゃって」
景はニッコリと微笑んだから、俺も作り笑いをしながら手を横に振った。
「いや、別にいいんだけどさっ!俺が悪かった……」
そこまで言うと急に肩を掴まれて、あっと言う間に壁に身体をドッと押し付けられた。
景は殺気立った目でこちらを見上げてくる。
やばい、俺、ここで死ぬかも。
「お願いだから、顔はやめてよね!ボディーにして!」
「は?」
「最後に、お母さんに電話させてくれる?今まで立派に育ててくれてありがとうって!」
「ふふっ、何言ってんの桜理」
景に胸ぐらを掴まれて、顔を寄せられた。
あぁ、もうダメだ。
そう思って目をギュッと瞑り、歯をくいしばる。
拳が飛んでくると思った次の瞬間、景の唇が俺のそれに触れて、口内に無理やり舌が捻じ込まれた。
「んんっ?!!」
何が起こっているのか分からず、とにかく急いで景の身体を押すけど、力が強くてビクともせず、成されるがままになってしまう。
何?!何なの?!こいつのいやらしい舌使い……?!
ようやく唇を離されると、景は舌舐めずりをして、勝ち誇った顔をしてニヤリと微笑んだ。
「……消毒」
「はぁっ?!」
「修介の唇の感触、覚えておいてほしくないからね」
そう言うと俺の肩をポンポンと叩いて、何事もなかったように店の中へと戻っていく。
その後ろ姿を見て、俺は唇を抑えながらわなわなと顔を熱くさせた。
「んだよッ、景のヤロー……」
不覚にも、ドキドキしちまったじゃねーか!
修介はいつもこんな濃厚なのをしてもらってるのかよ。
なんか、羨ましいな……
はっ、何?!この感情?!
「俺はホモじゃねーぞ……」
今度間違いがあったら次こそは殺されるだろう。
そう思いながら顔を真っ赤にさせて二人の元へ戻ると、案の定、タケに盛大に揶揄われたのであった。
ともだちにシェアしよう!