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第400話 side桜理

店を出ると、景は振り返った。 「この間はごめんね。勝手に電話切っちゃって」 景はニッコリと微笑んだから、俺も作り笑いをしながら手を横に振った。 「いや、別にいいんだけどさっ!俺が悪かった……」 そこまで言うと急に肩を掴まれて、あっと言う間に壁に身体をドッと押し付けられた。 景は殺気立った目でこちらを見上げてくる。 やばい、俺、ここで死ぬかも。 「お願いだから、顔はやめてよね!ボディーにして!」 「は?」 「最後に、お母さんに電話させてくれる?今まで立派に育ててくれてありがとうって!」 「ふふっ、何言ってんの桜理」 景に胸ぐらを掴まれて、顔を寄せられた。 あぁ、もうダメだ。 そう思って目をギュッと瞑り、歯をくいしばる。 拳が飛んでくると思った次の瞬間、景の唇が俺のそれに触れて、口内に無理やり舌が捻じ込まれた。 「んんっ?!!」 何が起こっているのか分からず、とにかく急いで景の身体を押すけど、力が強くてビクともせず、成されるがままになってしまう。 何?!何なの?!こいつのいやらしい舌使い……?! ようやく唇を離されると、景は舌舐めずりをして、勝ち誇った顔をしてニヤリと微笑んだ。 「……消毒」 「はぁっ?!」 「修介の唇の感触、覚えておいてほしくないからね」 そう言うと俺の肩をポンポンと叩いて、何事もなかったように店の中へと戻っていく。 その後ろ姿を見て、俺は唇を抑えながらわなわなと顔を熱くさせた。 「んだよッ、景のヤロー……」 不覚にも、ドキドキしちまったじゃねーか! 修介はいつもこんな濃厚なのをしてもらってるのかよ。 なんか、羨ましいな…… はっ、何?!この感情?! 「俺はホモじゃねーぞ……」 今度間違いがあったら次こそは殺されるだろう。 そう思いながら顔を真っ赤にさせて二人の元へ戻ると、案の定、タケに盛大に揶揄われたのであった。

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