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第399話 side桜理

――数日後。 俺とタケはいつもの和酒和食の店で久々に落ち合う約束をした。 景にはこの事は知らせていない。 というかあの日以来、なんだか気まずくて、なるべく景には会わないようにしている。 「おー、タケおつかれー」 「あ、おつかれ桜理ー。早速だけど、今日景ちゃんも来るってー」 「はっ?」 店に入って着席するなりいきなりぶっ込んでくるタケに驚愕した。 「何で!お前誘ったの!?」 「言ってないのに何故か知ってたよ? 今日僕もそこに行くからねって。多分この前の事で桜理に話したい事があるんじゃないの?」 超怖ぇー。なんで知ってんだよ。 俺は修介とのキスを鮮明に思い出す。 やっぱりまだ許してくれてないのか? 「俺はちゃんと謝ったからね。桜理は謝ってないでしょー」 「あっ、謝ったよ!あいつ、怒ってないって言ってたぜ!途中で電話切られちまったけど……」 なんだか景に誘導尋問されたように思ったのは、気のせいじゃなかったのか? タケは余裕のある表情で俺を茶化した。 「その後音沙汰無いんでしょ?だったら許してないのかもよー?」 「マジ?お前、適当な事言ってんじゃ」 「お疲れ。桜理」 振り返ると、噂をすればの景がいた。 「話があるんだけど……ちょっとだけいいかな?」 景は店の外に視線を向けて合図した。 やっべぇ。 景がめちゃくちゃ笑顔だ。 今までの経験上、だいたいそういう時って何かあるんだ。 景はそのまま歩き出したから、その背中に恐怖を覚えて、無言でバッとタケの方を見やる。 タケは口を開けて両手を頬につけて、ムンクの叫びのような状態で俺を見ていた。 俺も半目で口をあんぐりと開けたまま、まさか、と思い景の後についていく。

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