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第402話
突然の報告に心構えが出来ていなく、俺は叫んでしまった。
ま、まさか俺よりも先に決まってしまうなんて……
景は頬杖を付いて身を乗り出した。
「へぇ。おめでとう。どういう会社?」
「金属加工会社の営業。俺、結構気に入られたっぽい」
「ふーん。物好きな人もいるんだね」
「社長も社員もいい人でさー。俺、意外と張り切っちゃうかも」
「そう。翔平なら大丈夫だよきっと。最初は慣れなくて大変だろうけど、応援してるから」
二人の会話を横目に、カップの中身を飲み干した。
会話に入らない俺を、景はジッと凝視してからニコリと笑った。
「修介だって、ほぼ決まりでしょう?自信あるって言ってたじゃない」
「そ、そん時はそう思ったけど、まだ結果待ちやし、何とも言えへんよ」
「大丈夫だよ。そこがダメだとしても、また新しいところにチャレンジすればいいんだから」
「そうやって簡単に言うけど、大変なんやで!何でもこなせる景と違って、不器用なんやから!」
キーキー言う俺を宥める景。
そんなやり取りを見て、翔平は思い出したように口にした。
「お前らってさー」
「「ん?」」
「一緒に住まねーの?」
景と顔を見合わせた。
俺は、その事については考えていないわけじゃなかった。
景はずっと一緒にいてくれるって言ってくれた。
だからいつかは一緒に暮らしてみたい。
でも、景のレベルに合わせるなんて死活問題だ。
景が住んでいる高級マンションで一緒に暮らすとなったら、例えどんないい会社に就職出来たとしても自分の給料からはとても払えないと思うし、かといって景のヒモになるつもりもない。
自分は自分のレベルでもいいから、ちゃんとしたい。だから、安易に一緒に暮らしたいとは言えなかった。
景もきっと、こんな俺の気持ちを汲んでるんだと思う。
俺たちは住む世界が違う。
でも、愛し合ってしまった。ただそれだけ。
景はきっと、いつかはね、とか言って適当に流してくれるだろう。
そう思っていたけど、景は俺の予想に反してハッキリと告げた。
「住むよ。修介の就職が決まったら」
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