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第403話

「……は?」 目が点になる。 まるでちゃんと二人できっちり話し合って決めたかのように自信満々に言ってるけど、俺はそんな話、初耳だ。 俺はすぐさまカップを置いて首を横に振った。 「無理無理無理!あのマンションの家賃、一体いくらするんや!俺は払えんで!」 「別に、僕のマンションじゃなくてもいいじゃん」 マンションじゃ、なくてもいい?どういう事? やっぱり目が点になっていると、翔平は「なるほどー」と言いながら何度も頷いた。 「マンション引き払って、引っ越すって事?」 「うん。六畳一間でも、風呂無しボロアパートでも何処でもいい」 「はは。まさかお前の口からそんな言葉が出るなんてなー」 「修介と一緒なら、何処でもいいよ」 俺は訳が分からず、ただ二人のやり取りを聞いていたけど、徐々に理解してきた。 可憐に紅茶を飲む景の顔をジッと見ながら、考え込む。 要するに、あんな誰もが羨むような高級マンションを退去してでも、俺と一緒にいてくれるって事? そんな事、本当にできるの? 「だから、早く決まってよね、就職」 景は俺に向かってそう言い放つ。 あ、そうだ。 景って、嘘は吐かないんだったっけ。 嬉しさをこみあげさせながら、何度も首を縦にふった。 「う、うん!頑張る!」 「うん。頑張って」 「まー、気合いで会社受かれるほど世間は甘くないけどなー」 翔平をキッと睨むと、景は笑った。 お店を出た後、景と車に乗り込んだ。 翔平は景に言われた通り、車には乗らず、その場で笑顔で俺たちを見送ってくれた。 「景。これから何処行く? 俺ん家でゴロゴロする?」 車の中から翔平の姿が見えなくなってきた頃、信号待ちをしている最中、景に尋ねた。 景は前を向いたまま、俺の頭を片手で撫でる。 「いや、これから行きたいところがあるんだ」 「あ、そうなん?映画とか?」 「僕の実家」

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