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第409話

「あ、お父さんだわ」 お母様は立ち上がり、玄関の方へ向かった。 とうとう、この時が来てしまった。 たまらず景の服の裾を掴んでクイッと引っ張ると、クスクスと笑われた。 「なんて顔してんの」 「ほ、ほんまに言うん?とりあえず今日は友達で通したらあかん?」 「ダメ。言う。だって一緒に暮らすんだから」 「そんなん、勝手にそっちが決めた事やんかっ」 「え、嫌なの?僕と住むの」 「嫌じゃないけど……大丈夫なん?お父さんとお母さん、もしめっちゃショック受けたりしたら」 「大丈夫だから。心配しないで」 「でも」 「あぁもう、うるさいな」 景は俺の後頭部に手を回して引き寄せ、強引に唇を奪う。 舌先で上唇を突かれると、閉じていた口が自然と開いて、濡れた舌の侵入を許してしまった。 「ふっ……んんッ……」 そのまま激しく口内を侵されて、つい喉が鳴ってしまう。 目をギュッとつぶりながら景の舌に翻弄されながらも、神経を耳に集中させた。 二人は玄関先で会話をしているから、まだこっちにはやって来ないとは思うけど…… 気が気じゃなかった。 それに、すぐそばでモコが俺たちを見ている。 吠えはしないけど、さっきからトタトタと床を走り回る足音が聞こえる。 久しぶりのキスに脳が蕩けそうになっていると、二人の足音がどんどん近づいてくるのが分かった。 焦って体を押すと、景は最後にリップ音をチュッと鳴らしてからようやく離れてくれた。 「僕が大丈夫って言ってるんだから、大丈夫」 そう言って今度は俺の頬に素早くキスを落とす。 景の濡れた唇が目に入ると、余計に心拍数が上がって、今の俺にとっては逆効果だった。 全然、大丈夫じゃない!

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