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第35話
ゆっくりと右を向く。
彼もこちらを向く。
……目が合った。
「机、動かすね」
笑顔ではないものの、思っていた以上に優しい声。
「寺島君?」
ぼんやり彼の顔を見ていた自分に、彼が声をかけてきた。
「あ、ごめん!俺も動かすわ」
慌てて机を合わせる。
「ありがとう、佐々木君」
「いいよ。教科書、ここでいいかな?」
「あ、うん!」
俺、今、佐々木雅実と会話してる。
「はい、では、授業を始めますね。昨日の……」
俺と彼を確認した先生は、授業を始めた。
小学生以来だ、こんなに授業が楽しみなのは。
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