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竜二と七都芽 ―― 4 (編集済み)

 シャワーを終え脱衣所に出ると、  例のイケメン君が ”待ってました”みたいな感じで  立ってたから。  思わず俺は ”げっ!”となって、とりあえず  大事なところは手で隠した。     「ささ、これにお着替えねー」  突き出されたのは、大きな紙袋。  多分中身は服だと思われる。 「って、え? スーツ? 俺じゃ似合わないって」  まさかスーツ着て外めしって、  高級レストランとか料亭の類なんか?    そんなの俺、絶対無理! だから。   「テーブルマナーが必要な堅苦しい店なんか  嫌ですよ」    さすがに昨日の今日でオーダーメイドでは  なさそうだが、やけにサイズが合っている  その洋服に怯む。  「そんなの分かってるよ。  何でもいいから、さっさと着替えろ」      上手い具合に言いくるめられ、  俺はあれよあれよという間に着替えさせられ、  どこかで見覚えのある黒塗りの高級車に  押し込まれてしまった。   んでもって ――    自分は手嶌 竜二。  ご想像の通り”ヤ”のつく職業だが、  一般人が思ってるような危ない仕事は滅多にしない。  (”滅多に”って事は、たまにはするのかな……)  通常の主な仕事は株の売買と企業の幹部育成だ、と言い。  運転手が秘書の浜尾 利守。  助手席にいるのは組織の幹部の1人だと、  簡単な説明をされた。 ***** ***** ***** 「―― ここじゃ路駐出来ないんで、この先にある  コインパーキングに停めて来ます」      と、浜尾さんは車から竜二と俺を降ろしたあと、  八木さんと共に車で一方へ去った。    おでん・ラーメン・たこ焼き・お好み焼き  ……等など。    その通りには多種多様な手押し屋台の店が  ひしめくよう並んで、営業していた。    いや、それにしても……こんな場所へ  スーツでドレスアップして、   クラウン マジェスタみたいな国産高級車で  乗り付けるお客って何なんだろ……。    って、思ってたら。  ここにある屋台は全部、煌竜会傘下の香具師が  経営しており。  竜二は週に1~2度、こうして訪れ、  抜き打ち視察兼挨拶回りをするんだとか。      どの屋台からも”よっ、竜ちゃんお疲れぇ~”  みたいな親し気な声がかかって。    どの屋台でも、お腹がはち切れそうになるまで  ご馳走された。     『じゃ、ごっそうさん』 『またいつでも来てなー』  隅田川沿いの遊歩道をそぞろ歩き、  軽く腹ごなしをした後は ――、  今日のスーツに似合ったオシャレなホテルの  展望ラウンジへ。    窓際のテーブルは半数がカップル用のペアシートで。    テーブルを挟んで椅子があるんではなく。  テーブルは窓辺にくっつくよう設置されていて、  椅子はそのテーブルと平行に並んでいた。  竜二は常連らしく ”ご予約席”と札の乗った  テーブルに竜二と俺は案内された。    あ、まぁ―― ここからの眺望は最高だけど、  男同士でこうゆうテーブルに着くのは  かなり恥ずかしい……それに。   「俺はまだ未成年」 「気分楽しむくらいなら構わないだろ~」  って、竜二は言ったけど。  運ばれてきた飲み物はどう見てもカクテルっぽい。  ”乾杯”と、俺のグラスにカチリと自分のグラスを  軽く合わせ、ひと口飲んだ竜二はそんな仕草も  すっごくキマっていて、何故だかちょっとムカついた。    で、腹立ち紛れに飲んだ俺のオレンジ色の  飲み物は ――ひと口飲んだ途端、  喉に焼け付く刺激が走って、咳き込む。    ゲホッ ゲホ ゲホ ……     「な、なんだよ、コレ……」 「何? って、ただのジュースだろ」 「良く言う」  それは紛れもないカクテルだった。    それもアルコール度のかなり高いテキーラを  使ったホテルオリジナルのモノ。     「なら、俺のもちょっと味見させてやる」    と言って、本日2回めの口付けをされた。  しかも今のは半ば強引に唇を割られ、  そこから彼が含んでいたカクテルが  流れ込んできて。    カァァァ――ッと一気に顔が火照り、  心拍数も急上昇。    彼の唇が離れていった後もしばらく俺は  惚けた表情のままだった。  

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