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竜二と七都芽 ―― 5 (編集済み)

 エレベーターから降りてさっさと進んでいく  竜二の背中を見ながらひたすら早足でその  少し後ろを歩く。  深夜0時を少し回った廊下はシーンと  静まり返っている。    その廊下の突き当りで  やっと足を止めた竜二の背にどすんとぶつかった。 「わっ ―― あ、ごめんなさい」 「一応確認しておこうか」  くるりと振り返った竜二が、  ぽかんと半開きになった七都芽の口をキスで塞いだ。  人通りのない廊下でいつもの七都芽なら気付いていた  ハズだった……そこは客室の数も少ない  エグゼクティブルームの並ぶフロアだと。  やがて離れた唇は、七都芽が”もしや”と想定していた  言葉を耳元で囁いた。 「ここから先はお前の意志だ……来るか?」  さっきまでは、あんなに優しく綻んでいた表情が、  能面のように冷たく凄みを帯びる。  その手に握られたカードキー。  目の前に振りかざされ、全身が強張った。  その意味が分かるようになったのは、  一体いつの事だったか……。  祠堂学院は幼稚舎から大学院まで揃っている  一貫教育制のマンモス校だ。  幼稚舎・初等部低学年と大学及び大学院は  免除となるが、それ以外の学生は全員入寮が原則で。    七都芽も高等部の寮生だ。    ”漲る若さを持て余して”    基本的には校内恋愛禁止のハズが、  毎年新年度には同級生同士・先輩と後輩・  教師と生徒・先生同士、等など……様々な  カップルが誕生している。    それでも ――   カードキーと、何の感情も読み取れない竜二の顔を  交互に見比べ、真守はしばし立ち竦んだ。    だが、自分の意志と言われたって、  今の七都芽に、他の選択肢があろうはずもなく。

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