2 / 22
作戦開始
部活は休みだが、顧問の許可をもらい理科室を使わせ貰っている。
「やった!完成だ!!」
机の上に置かれた皿の上には茶色い歪な団子が並ぶ。
それをビニール袋に無造作に入れると理科室を後にした。
実験の被験者にはもう目を付けてある。
俺は生徒の少なくなった教室の中を盗み見た。
この学校で一番人気のある男、宗方 勇波 。
ルックスよし、性格よし、文武両道……それで家柄も良いなんて、嫌みなくらい文句無しのハイスペック男。
俺の想像する獣人に近いのは奴を除いて他にはいない。
運が良い事に奴は今、教室に一人だ。
行くなら今しかない。
しかし……同じクラスだが話した事は無いに等しい。
どうやってこれを食べさせる?
『お腹空いてない?これ食べなよ』
あからさますぎて怪しいな。
土下座して『食べてください』
360度どこから見ても怪しさしかない。
後ろから近付いて口にねじ込む……体格差で振り払われ、吐き出されて終わる。
「何か用?」
「うわぁっ!!」
いきなり声を掛けられて、驚いた俺の手からビニール袋が落ちて……。
団子はばら蒔かれ…コロコロ…コロコロ……転がっていった。
「そんなぁ……折角作ったのに」
「ごめん、すごい視線を感じたから……何か用かと思って……」
俺が勝手に驚いただけなのに、申し訳なさそうに謝ってくれる。
袋にかろうじて残った2つの団子を拾い上げた。
「それは?」
「……何でもない」
作戦は開始する前に失敗に終わった。
ともだちにシェアしよう!