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祝福
広い宗方家の庭で子供達は自由に狼の姿になって駆け回っていた。
今日は宗方家に泊まって行けと、夕飯をご馳走になり、お風呂を借りると電池が切れたように眠りについた。
宗方の部屋に布団を敷いて貰っているが……大騒ぎだった三人に体力を奪われ、子供と一緒に寝落ちしそうだった。
宗方に良く似た小さな寝顔に笑みが溢れる。
この子達が受け入れて貰える社会。
この子達が幸せを掴める世界。
『俺を信じて』
宗方は約束通りの世界をくれた。
俺なんかに勿体無いぐらいの最強の旦那様。
後ろで静かに扉が開き、宗方が部屋に入ってきた。
子供達の頭を順番に撫でていくと最後に俺と向かい合った。
「ごめんね……親父が浮かれて勝手に話を進めて」
「浮かれてたんだ……」
全然気付かなかった。
むしろ嫌がられてるかと思った……。
「住む場所も仕事も用意してくれるって……良いのかな?そんなに甘えてしまって……」
「嫌なら断ってくれて良いんだよ?山の生活が楽なら、また山に戻ろう」
「ううん……受け入れて貰えて嬉しい」
子供達は……アルファの血が為せる技か、全く物怖じせずに順応している。
この街で暮らし始めても何らこの子達の生活に問題は無さそうだ。
……山では全く必要無かったけれど……俺も子供達もこれからは『宗方』として生きていく。
宗方って呼ぶのもおかしいよな。
「これからも宜しくね……勇波」
宗方…勇波の耳と尻尾がビンッと張った。
「こちらこそ、宜しく……楽空」
初めて名前を呼び合い……固く手を握りしめて、今更ながら口付けをして誓い合った。
嬉しい時も、悲しい時も、ずっと一緒に……
生涯あなただけを愛し続けると……。
ふたりぼっちで始まった愛は……こうして今……祝福を受けた。
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