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アルファの父

流石は宗方の親…迫力が半端無い。 眼力が凄い……見られているだけで身がすくむ。 ガチガチに固まっている俺の前に宗方の父親は1枚の写真を差し出した。 「ネットに上げられ獣人発見騒ぎになっていた写真だ……これはお前達だろう?そしてこの大規模な獣人返りの一件……お前の仕業だな?勇波」 宗方の背に乗る俺の姿……あの男も持っていた例の写真。 そんなに騒ぎになってたのか……。 ……と言うより宗方、自分の親には何も言ってなかったのか!? 慌てて宗方の顔を見ると、俺や子供達には見せたことのない顔。 いや前に1度……そうだ……最初に熊を狩った時の様な……そんな鋭い顔をしていた。 「バレてました?良いでしょう?何か不都合でも?」 「……いや……気に食わない奴も一睨みで言うことを聞くし他の奴らの敵意にも機敏に感じ取れて言うこと無いな……」 「……そうでしょう?」 低い含み笑いがシンクロした。 何だろう……この親子。 俺の思う親子の関係では理解できないが……これが宗方家では通常なのだろうか? 宗方の母親はオメガらしく……おっとりとした人だったのに……アルファの親子怖い!! 二人のアルファの張り詰めた空気に俺は何も言葉を発せられずにいる。 「しかも……こんなに良い香りの可愛らしいオメガを番にして……アルファの子を3人も授かるとは……お前にしては良くやったな。上出来だ」 お父さんがくんっと鼻を鳴らす。 「音羽の匂いをあまり嗅ぐな……」 またしても睨み合いが始まり、張り詰めた空気に固まっていると……お母さんがお茶を運んできてくれた。 「あら?二人とも、そんなに怖い顔をしてはいけないわ?楽空さんが怯えてしまっているでしょう?」 デレッと相好を崩すお父さんの姿に親子だな……と感じた。 バタバタと足音がして宗方の部屋で遊んでいた筈の子供達が入ってきた。 同じアルファ同士だからか、宗方の睨みに慣れているからなのか……お父さんの肩に乗っかって頬を引っ張り、髪を引っ張り、膝の上で跳ねる。 お父さんも宗方も何も言わないし、お母さんは「あらあら、貴方……嬉しそうね」 おっとりと笑っている。 全然嬉しそうに見えない無表情に、俺一人が慌てて『すみません』を繰り返した。 蓮が俺の側に後ろ手に何かを持って近づいてきた。 「父さんの部屋でパパいっぱい見つけた!!」 ……?俺を見つけた? 蓮が取り出したのは写真。 写っていたのは……。 「……俺?」 体育祭や校外学習の時のクラス写真だった。 写真が嫌いな俺は、遠くに小さく写っていたり、後ろ姿なんて俺が見ても俺なのか分からないのに。 それなのに……恥ずかしくて顔が熱くなる。 「だからずっと好きだったって言っただろう。これ……一番のお気に入り」 珍しく俺が笑っている写真。 「蓮も!蓮もこれ好き!!」 宗方の膝に乗っかり二人で写真を笑顔で見てる。 そんなにじろじろ見られると……。 「恥ずかしいからしまって……」 「楽空君……君は宗方の姓に入ってくれるのかな?それとも勇波が音羽の姓に入るのか?」 お父さんに不意に話を振られた。 ……正直そこまで考えて無かった。 宗方に助けを求めると…… 「どっちでも良いよ?音羽といれるなら姓なんて関係ない」 「宗方 楽空。音羽 勇波……宗方 楽空の方が言いやすいな……よし、うちに来なさい」 ……そんなんで良いんでしょうか? まぁ……俺の両親は「不束な息子ですが」なんて嫁がせる考えしか無さそうだったから……良いのかな? 「これから住む場所は?決まっているのか?」 難しい顔をしているけど頬を翔に引っ張られ、髪を郁に引っ張られ……申し訳無い。 「山に……帰る?」 宗方の顔をもう一度確かめる。 「丁度アルファの部下が欲しかったんだ。アルファ同士だとぶつかり合う事が多いが血縁なら多少平気だろう。俺の下で働け勇波。新居は準備しよう」 「良いのか?乗っとるぞ?」 「やれるものならやってみろ」 バチバチと火花が散って……呆気に取られている間に色々決まっていた。

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