「勇波君ありがとう。息子を連れてきてくれて……」 久々に再会した両親は俺達の姿を確認するなり驚くこともなく、宗方に頭を下げた……その頭には……俺達と同じ耳がついている。 「どういうこと?何で……顔見知り?」 何故両親が宗方の事を知ってるんだ? 「数ヶ月前、勇波君は挨拶に来てくれたのよ?……本当に……バカな子なんだから……」 獣人でオメガになってしまった俺を両親は涙を流しながらも受け入れてくれて……心配を掛けた事を叱られた。 怒られて嬉しいなんて最初で最後かもしれない。 「おじいちゃん?」 「おばあちゃん?」 「はじめまして!!」 子供達は両親を引っ張って自由に家の中へ入って行ってしまった。 ……。 「宗方……どういう事?」 「音羽と子供達が憂いなく暮せる様に……みんな獣人に変えようと思った。でも音羽の両親にだけはちゃんと挨拶しとかないと……と思って挨拶に行ったら、自分たちから獣人にって言ってくれて……黙っててごめん。でも言ったら音羽は止めただろ?」 「そりゃ……止めるだろう」 俺のバカな行動が宗方だけじゃなく、人類を変えてしまうなんて……。 「だろ?だから勝手にやった。悪いのは俺。音羽のせいじゃ無い……」 何時もの自信に溢れた顔ではなく……不安そうな宗方……本当に……こんな事をやってのけた男とは思えない。 「……喜んじゃ……駄目なんだろうけど……お父さん達にまた会えるようになったのは……嬉しい」 宗方の手を握り笑いかけると、途端に尻尾が千切れそうなほど大きく揺れる。 「皆の服もお父さんとお母さんからのプレゼントなんだよ?」 「え……そうなの?」 着ている服を見て……心が温かくなる。 家の中から聞こえるにぎやかな子供達の声に、俺達も手を繋いで家の中へ移動した。 両親は獣人になっても生活は何も変わらないと言って笑っている。 宗方が言うには、二人ともベータらしい。 うん……良くも悪くも平凡な家庭だったし。 今日は俺の家に泊まり、明日は宗方の家を訪問する予定。 母は元気な初孫に夢中になり、一緒にお風呂に入っている。 父は……酔っている様だ。 宗方に絡んでいる。 久々の畳に顔を付けて、その様子を見ていたら涙が溢れ出た。 もう……戻らないものだと思っていた家族の温もり。 俺のバカみたいな行動が大勢の人を巻き込んでしまった……それなのに俺はこんなに幸せで良いのだろうか? 「また泣いてるのか?」 いつの間にか側にいた、宗方の手が俺の髪をすく。 父は……寝落ちしたみたいだな。 その口元は笑っていた……。 「こんなに幸せで良いのかと思って……」 「そりゃあ……俺の番なんだから……世界で一番幸せになって貰わないと」 「ふふ……すごい自信」 「番を得たアルファは最強だよ……番の為に何でもするよ?」 ペロリと唇を舐められ……唇を重ねる。 子供達の声が大きくなってきて……。 それを受け取るために俺は立ち上がった。 「……俺だって……宗方の為なら何でも出来るから……」 口に出すと、思いのほか恥ずかしくて、言い捨てると急いで廊下へ走った。