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人里へ
「音羽。里帰りしてみないか?」
子供達も人の姿に成れる様になった頃、唐突に宗方が聞いてきて……俺は焼こうとしていた肉を落としてしまった。
蓮 も翔 も郁 もきょとんとこちらを見上げてくる。
「パパどうしたの?里帰りってなあに?」
子供達は俺をパパと呼び、宗方を父さんと呼んでいる。
別に俺は母さんでも良いんだけど……。
「里帰りってのは、生まれ育った場所に帰ることだよ。パパのお母さん……おばあちゃんのところへ行くんだ」
「パパの母さん?会いたい!!」
子供達は俺達以外の人と会ったことがない……好奇心旺盛な子供達は当然会いたがるだろう。
「でも宗方……」
こんな姿を受け入れられる気がしない…あの男の様に面白がられて、研究だって実験動物の様に扱われる……子供達を抱き寄せた。
「大丈夫……俺を信じてって言っただろ?音羽の為なら何でもするって言った筈だ……」
額にキスをされて…金色の瞳に見つめられると逆らうことは出来なかった。
何処から調達してきたのか、真新しい洋服。
尻尾が出せるようになっている。
宗方のお手製?
服も作れるなんて器用だな……。
着替え終わると、落ちないように子供達の体を紐で固定して四人で宗方の背中に乗って山を降りた。
宗方のスピードに子供達はおおはしゃぎだが……遠くに人家が見え始め……期待と恐怖が入り交じり、手が震える。
『大丈夫だ……俺を信じて……』
宗方の声に心を支えられる。
「うん……」
……きっと大丈夫。
……………あれ?
町中へ入ったが、狼の姿で駆ける宗方の姿を見ても誰も不思議がらない。
むしろ宗方の姿をうっとりと見つめている。
そんな人々の頭の上にも耳が……。
子供達は当然すれ違う人の姿を疑問に思わず、初めて見る風景に見入っている。
「宗方!?これ、どういうこと!?」
『ん~花粉症みたいなもんじゃないか』
な……何?
何をしたの?
冷や汗がこめかみを伝った。
『音羽が作った団子を元にして作った物を粉末にして風に乗せただけ……これだけ獣人返りをした人がいたら獣人なんて珍しくもないよね?』
「え……ええっ!?そんな……皆を巻き込んだの!?」
『音羽の為なら何でもするって言ったじゃないか……獣人になって人間に受け入れられ無い他に何か不利益が有ったか?』
「いや……そこまでは……」
敢えて言うならヒートかな?
『なら良いだろう?獣人ライフも楽しいもんだし』
良いの……良いのか?
罪悪感を抱きながら懐かしい家の前に降り立った。
インターホンを押そうとして手が止まる。
……会って……何から話したら良い?
もし両親に存在を否定されたら……
「パパ……?」
「おじいちゃんとおばあちゃんここにいるんでしょ?」
「早く会おうよ!」
子供達が動きを止めた俺を不思議そうに見上げてくる。
「大丈夫だって。ご両親を信じて……ね?」
「……うん」
宗方の言葉に勇気付けられ、インターホンに再度手を伸ばした時……
「遅いっ!!早く入ってきなさい!!」
「父さん……母さん……」
バンッと玄関が勢い良く開いた。
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