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最終話

高雅のことは憎からず思っている。 いつも自分たち親子を気遣い、事あるごとに様子を伺いに来てくれる。 困ったことはないかと訪ねてくるのは常で、実際は彼の采配のおかげで何一つ不自由のない生活を送らせてもらっている。 本来なら、白虎族に仇をなした男の子供を宿した香蘭は、龍蓮の一族同様処刑されてもおかしくはなかった。 だが、彼らはそうはしなかった。 『これまでの不遇、察してあまりある。そなたは何も悪くない。これからは心安らかに暮らせるよう、我ら白虎族がそなたらを庇護しようぞ』 そう決断したのは、高雅の兄である白虎族の王で、その後手厚く保護してくれた。 彼とはほとんど顔を付き合わせる機会はなかったが、代わりに弟君である高雅が心を砕いてくれた。 だからだろう。 凛蓮とともに日々健やかに暮らしているのは。 彼がいなければ、たとえ庇護されたとはいえ、どこか肩身の狭い思いをしながら、宮廷の奥で隠れるように息を潜めて親子二人、暮らしていただろうから。 それに随分前からのことなのだが、高雅のそばにいて、その匂いを嗅いで、その声で名前を呼ばれるとーーー龍蓮に酷く似た声音だというのに、暖かな胸の高鳴りを覚えていた。 (これを、世間一般では恋と呼ぶのだろうか……。だけど、私は恋をしたこともなければ、伴侶として誰かを愛したことはないーーー) 凛蓮のことは心から愛していたが、龍蓮との間にあったのは黒く歪みきった愛とも呼べぬ執着だった。 元々は純粋に愛してくれていたのだろうと思う。 だからこそ、幼き頃の香蘭は龍蓮を慕っていたのだ。 だが、月日が流れるにつれ歪むのが愛だと刷り込まれてしまった心では、高雅から向けられる想いをどう受け止めていいのかわからない。 あれからずっと、高雅に言われた言葉をひとりで静かに考えを巡らせていた香蘭はふぅと小さく息を吐き出した。 陽は暮れ、もう夜の帳が降りようとしている。 もうすぐ約束の刻限だ。 自分はどうしたいのか、どうするべきなのか考えーーー香蘭は眠る愛しい我が子の頬を撫で、子供部屋と一枚扉を隔てた自分の寝室へと歩みを向けた。 それからどれくらいしてからだったろうか。 律儀に訪れを知らせる音が、香蘭に与えられた寝室に控えめに響いた。 香蘭はじっと声を出さず様子を伺い、ゆっくりと扉が開かれていくのを静かに見つめた。 恐る恐る、少しずつ開かれていく扉の向こうには、いつもより緊張した面持ちの高雅が立っていた。 「……入っても、よいのだろうか?」 自分を受け入れてくれるつもりがあるのなら鍵を開けておいて欲しいと自ら願ったくせに、香蘭がダメだと言えば、多分高雅はそれ以上は入ってこないのだろう。そういう人だ。人の心を試すようなこともなければ、踏みにじるような非道なことはしない。いつでも彼が与えてくれるのは、心が温かくなるような優しい感情だ。 まっすぐな心根の人。 だから、そんな人には嘘偽りなく、素直に応えるのが礼儀というものだろう。 「私は……穢れています。何年もの間、孔雀一族は崋山国の王族の慰み者として生き、一生を終えるのが常。私もその中の一人として生き、夜毎、この身を差し出してきました。貴方が見ている私が、貴方の瞳にどのように写っているのかは分かりません。それでも、こんな私でいいとおっしゃるなら、どうぞ私を受け取ってください。私は貴方を、多分……愛しています」 「香蘭殿……!!」 性急な足取りで入室を果たした高雅に、香蘭はその大きな胸に抱きしめられた。 とても力強く脈打ついつもより早い鼓動が、聞こえる。 己のものなのか、はたまた高雅なものなのか。 互いの視線が自然に絡み合い、そうするのが当然だというのうに、互いの唇が触れ合う。 「ん……ふぅ……っ」 自分など一飲みにできてしまいそうなほど大きな口だが、見た目よりよほど繊細に香蘭の唇を奪ってくれる。 ぺろりと、長く、少しざらつく舌先は、獣人特有の感触で、腰に回された大きな手に、気がつけば香蘭は身を預けていた。だが、顔は自分でもわかるほどに熱っぽく、まともに顔を上げていられない。 何か無作法をしたと勘違いでもしたのだろう。高雅が不安そうにこちらを見つめてくるのを感じた。 「香蘭殿、どうかしたか?」 「その……接吻をしたのは、これがはじめてで……」 言ってまた、香蘭は赤面した。 これではまるでウブな少女のようだが、手荒く扱われたり、相手の思いのままに弄ばれるだけの関係しか持ったことがなかった香蘭は、優しくされることが、こんなにもこそばゆいものだとは知らなかったのだ。 「それは……また……」 目を見開き、明らかに驚きの表情を浮かべた高雅の態度に、益々香蘭の羞恥心が膨らんでいく。言わなければよかったと、思えど後の祭りだ。 「お願いです。どうか、笑わないでください」 羞恥が限界を過ぎ、両手で顔を覆って俯いてしまった香蘭の顎を、高雅の長い指にゆっくりと仰向かされる。 見遣った先には、香蘭が知るどんな高雅よりも慈愛に満ちた優しげな微笑を浮かべていた。 「笑いなどしない。むしろ香蘭殿の初めてを頂けて俺は嬉しい」 「高雅、様……」 「高雅、と呼んでくれ。貴殿にはもっと気安く呼んでもらいたい。私にも香蘭と、呼ばせてくれ。ずっとそう呼んでみたかったのだ」 考える必要もなく、香蘭がこくりと頷くと再び唇を寄せられる。それを香蘭は静かに目を閉じ受け入れた。腕を高雅の太い首に回す。 「そのまま、しっかりとしがみついていてくれ」 キスの合間に指示された通り、柔らかく指通りのいい艶やかな被毛に覆われた高雅の首にしがみつく。 ゆっくりとした足取りで、寝台へ運ばれる。苦痛でしかなかった交合を厭うばかりだったが、いまは早く一つになりたいと願う。 「高雅……私を貴方のものにしてください」 「ああ。勿論そのつもりだ」 軍服を着込んでいてもその身体の逞しさがみて取れる高雅は、やはり一糸纏わぬ姿になっても雄々しく、逞しかった。 潔く全てを脱ぎ捨てた高雅の裸身に見とれていると、無骨そうに見える高雅の手により、あれよあれよという間に香蘭も身につけているものを剥ぎ取られ、ベッドへ横たえられた。途端、キスの雨が全身に降り注ぎ、香蘭の白い肌に赤い花弁があっという間に咲きちっていく。 優しすぎる愛撫は、香蘭の情欲をじわじわと高め、血が沸騰し、自然と息が上がる。 「香蘭……香蘭」 「あ……はぁっ、んぅ……」 骨まで溶かされそうな熱心な愛撫の最中に、龍蓮とよく似た声音でその名を呼ばれても、今は怯えるどころか歓喜しかなく、もっと呼んで欲しいと思ってしまう。 白い被毛で覆われた大きな体に組み敷かれても微塵も怖さはない。 高雅の少しざらついた舌先で乳首を舐められるとびりびりとした、なんとも言えない快感が腰に走り、香蘭は嬌声をあげた。鋭く尖った牙を突き立てられ、じゅぶっと吸い上げられると脳まで痺れる有様だ。 散々龍蓮に色事を仕込まれた体だが、高雅が白虎族だからか、今まで感じたこと来ない快感が次から次へと沸き起こり、戸惑いすら覚えた。 愛し愛されるもの同士の交合というのは、こんなにも心地いいものなのだと、子を産んだ身であるにも関わらず、今になってようやく知ることができた。 「あ……そこ、は、舐めてはだめです、……ぁあっ」 すでに香蘭の雄は立ち上がり、蜜を垂らす有様で、トロトロと垂れたそれが秘部まで濡らしていた。 それに気がついた高雅が、事もあろうにそこは舌先を伸ばしたものだから、香蘭の体温は羞恥に一気に上昇してしまう。熱くて、熱くて堪らない。 「ぁあ、だめ……です、汚い……」 風呂に入って身支度はしていたものの、不浄な場所に変わらなく、未だ嘗てこんなふうに舐められた試しなどなかった。あまりのことに下肢に顔を埋めた高雅の頭を引き剥がそうと、短い毛を引っ張るも、ビクともしない。 頭の両側にある丸っこく可愛らしい耳は香蘭の甘い喘ぎにぴくぴくと反応を示しているから間違いなく聞こえているはずなのに、高雅は聞く耳を持たない。 「……ん、ここからも、蜜が垂れ出したな。そろそろいいだろうか?」 「あ?……っんぁあ、……ふっ、うんんぅ!」 高雅に注がれた唾液だけではなく、内側から潤みだしたのを見破られたあと、迷い無く指を挿入された。 高雅の指は一本でもとても太く、飲み込むのは困難なように思えたのに、実際に入れられてしまうと媚肉は歓喜したようた絡みついていく。 「あぅうあ、……ぁあっ、はぁっ、ああっ」 「痛くはなさそうだ。香蘭……もう一本入れるぞ?」 「やっ、待って……あっ、あぁあ……っ」 丹念に解してくれているのだとわかる。それでもやはり何年も受け入れる事をしていなかった秘部は、指だけだというのに挿入時独特の圧迫感にビクビクと過剰に反応を示してしまう。 「ぁあっ、あぁ、……ぁあ、……ぁああ!!」 跳ね上がる腰に、喘ぎ声が止められない口元からは飲みきれない唾液が垂れてゆく。それでもこれは、高雅とつながる為に必要なことだと思えば、拒むことなどできず、香蘭はひたすら羞恥と葛藤しなければならなかった。 「私の指を、美味しそうに締め付けている。私のものを入れたら、ここはどうなってしまうんだろうな……」 独り言だったのかもしれない。だが、高雅のつぶやきをしっかり聞き取った香蘭はその瞬間を想像し、益々後孔に差し込まれた指を食い締めてしまう。 媚肉を高雅の指で丹念に撫で上げられ、何度も何度も背筋に快感が走る。香蘭の男の部分はもう真っ赤に腫れ上がり、ぐっしょりと下生えを濡らしていた。 「あっ、あっ、んぁあ……ぁっああ、高雅……様ぁ」 「高雅、と呼んでくれとお願いしたはずだが?」 「こう、が……高雅ぁ、……もう、いいです。もう、貴方を入れてください…。もう、我慢できません……。…貴方と、一つになりたい……っ」 「香蘭……。ああ、わかった。俺ももう辛抱できそうにない」 香蘭が意を決して、自ら秘部を晒すように両脚を大きく開くと、その両脚を高雅が鷲掴みにしてその方に担ぎ上げてしまう。 「痛かったら言ってくれ……」 「は、い……ーーーーあっ、あぁあ、ひぁああぁあ!!」 押し当てられたそれは予想以上に熱く、そして太く、香蘭は肉輪を今まさに潜ろうと押し込められていくそれのあまりの圧迫感にビクンッと大きく仰け反った。 丹念に解された成果だろう。 息をするのもためらわれる程の圧迫感があるのに、痛みはそれほどひどくない。 だが、やはり香蘭の秘部は獣人の逸物を受け入れられるほどに広がらない。高雅も限界が近いだろうに、香蘭を気遣ってついには押し込む力を緩めてしまう。 壊してしまわないか、痛みを与えてしまうのではないかと、高雅の精悍な顔には少しばかりの不安が浮かんでいた。 (まだ高雅のものは半分も入ってはいない……でも、どうすればいいのだ……?) 高雅は多分、これ以上は無理だと思っている。それが悔しげに噛み締められた唇を見れば一目で伝わってくる。 全てを受け入れてあげたい一心で、香蘭は意を決して、提案した。 「私が、やります……貴方を自分で、私の中に迎え入れてみせます……なので、貴方はそのまま後ろへ寝転がってください」 「いや、しかし……それでは、そなたに負担が……」 何をしようとしているのか察したのだろう。わかりやすく戸惑いをあらわにした高雅に、香蘭は力強く頷いてみせた。 「構いません。大丈夫です、無理そうなら今夜は諦めます……だから、お願いです。試させてください」 香蘭の決意が固いと感じ取ったのだろう。高雅は無理はするなと一言いい置いて、香蘭が望むままに、そのまま後ろへと倒れた。 香蘭はほんの少し繋がった場所の真上へ腰を移動させ、高雅のたくましい腹に両手をついた。 ゆっくりと、ゆっくりと。 高雅の楔を飲み込んでいく。 震える腰を高雅の両腕が支えてくれた。 それが嬉しくてたまらない。 深呼吸を繰り返しながら、ゆっくりと、ゆっくりと、高雅を迎え入れていく。 「うぁあ、……くぅ……うぁああぁ」 「香蘭、あと少しだ……あと少しで、全部挿いる……!」 「は……い、……あと、少しで……貴方と一つにーーーうんんぅ、はぁっ、あぁあ、あっあぁあっ」 媚肉を割り、狭隘な秘部へ道を作っていく高雅なものが、信じられないほど、香蘭の奥深くへ到達しようとしていた。 たった一度体験した最奥。普段なら絶対に届かない場所へと、高雅のものは到達しようとしていた。 「……っ、ーーーーーーッ!!!!」 ぐぷりと、これ以上ない場所まで、とうとう高雅を迎え入れた瞬間、香蘭は自分の頸が熱くなるのを感じた。 孔雀族にしかない頸から生える尾羽が、ぶわりと膨れ上がり、広がっていく。 「これは……なんと……なんと見事な…!!」 高雅が心から感嘆する声がきこえた。 香蘭は高雅を迎え入れることができた喜びに打ち震え、優雅に背後の羽を揺らしながら高雅の子種をねだった。 ここに注がれれば、おそらく高雅の種は芽吹くだろうーーー。 「高雅……あぁ、高雅……っ」 「香蘭……ああ、そなたは世界で一番美しい……っ!!」 極まったのは心が先か、体が先か。 熱い飛沫が胎内に広がっていくのを、感じた香蘭はほろりと涙を流していた。 幸せだった。 愛する人と心も体も繋ぐことができて。 この幸せだけは、大切に、生涯大切にする。 全てを出し終えた二人は、互いの体をしっかりと抱きしめーーー口づけを交わした。 「香蘭……香蘭……っ」 「高雅……ふぅん……」 この人と歩んでいく。愛する我が子凛蓮と、高雅と、自分と……そして、これから増えていくであろう新しい家族とともに、歩んでいこうと香蘭は心に決めたーーー。 (私は何があってももう恐たりはしない) 幸せを掴む覚悟は、今できたのだから。

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