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第6話

「凄いわねぇ~…って、ぼんやりしてると時間が無くなるわ!さぁ、もう行きましょ」 「う、うん」 「そうだな。俺たちも早く行こう」 お母さんの声に我に返ると、僕も彼らから目を離して再び歩き出した。 あんなに沢山のαと一緒に過ごすなんて…僕、大丈夫かな? そうして僕が頭の中をぐるぐるさせながら歩いていくと、あっという間に校舎と体育館へと分かれる場所まで来てしまった。 「じゃぁ柚月(ゆず)。お母さん達はここでね」 お母さんが立ち止まり、僕を見てそう言った。 「えっ?!」 「何ぼんやりしてるの?これから入学式でしょ?!しっかりしなきゃ」 言われて視界に入ってきたのは『入学式会場・保護者の方はコチラへ』の文字と矢印の示された看板。 「おいおい大丈夫か、柚月?」 お父さんが心配そうに眉を寄せた。 そうだった…。 今日は入学式で、お母さん達とはここでお別れなんだ。 「うん。大丈夫」 本当は不安だったけど、これ以上心配させたくなくて安心させる様に笑ってみせた。 式が終われば僕の新しい生活が始まるんだからしっかりしないと、と僕は大きく呼吸をすると一歩を踏み出した。 僕たちΩが進学する高校はある程度決まっている。 実はαとΩには特別な学校というものがあって、Ωの場合は希望の学校を願書に幾つか記載して出すだけ。 だから試験は無くて、中学生の頃の学業や運動の成績、生活態度の他にも特技など考慮して先生が平等に振り分けていく。 それから、地域を担当する教育委員会のΩ専門員が検討を重ねて何処の特別高校へ進学させるかを決めるんだ。 これは国の制度で、Ωの人権を大切にすることや将来困らない様にという理由、そしてαとの出会いを増やすことを目的としていた。

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