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第7話

国家の政策は、世界に通用する優秀な人材の確保だ。 なので、どんな家柄のαも花嫁候補を探すという意味でほぼ99.9%が、この特別な高校へと入学してくる。 そこで番となる相手と出会えれば将来お互いに安泰というわけだ。 だからαとΩが多く入学してくるけれど、βは殆ど居ない。 将来αを支えられるだけの能力を認められ試験に受かった選ばれた優秀なβの人間だけが僅かながら入学を許可されている。 とはいっても毎年1%程度の確率らしい。 そして僕が受かったこの学校は、実はαの有名人を多く輩出している超名門校だ。 だけど僕はそんなの全く関係なくて、家から1番近いという理由だけで選んでいた。 αとΩの特別な高校は、基本的どこも安全管理の観点から寮生活を義務付けられていて、その中で月に1度だけ帰宅を許されている。 だから家から近いという理由で僕はこの高校を選んだんだ。 勉強の出来は普通よりちょっと下な僕だけど、生活態度は普段から気をつけていたのと、調理クラブに入っていたのが良かったみたいだ。 体調を崩しがちの為、Ωはあまり部活動に参加していないので僕のクラブ活動実績がプラスに働いたのかも。 そしてヒートが無い分、無遅刻無欠席。 他に僕の強みになるような事は何もないから、せめて何か…という理由で3年生では料理を頑張ったので、特別にプロの様には上手くもないけれど結構作れる方だと思う。 だから願書のアピール文にはそこを書いておいた。 あとは神頼み。 そんなこともプラスになったのかは分からないけど、僕は希望の名門高校への入学が無事叶って今ここに立っている。 嬉しかった気持ちも、家族と離れて生活すると思うと急に心細く寂しくなってきた。 「柚月、頑張れよ。体に気をつけて」 思わず下を向くと、お父さんに肩をポンポンされて僕はゆっくりと顔を上げた。

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