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第21話

恐る恐るそちらを見てみると、案の定クラスメイトからの興味津々な視線が向けられていて、僕は自分の大失敗に気がついた。 決して目立とうなんて思ってない。 なのに一斉に向けられる視線が強く、そして何だか痛いのは気のせいじゃないと思う。 α怖い、Ωの人も何か怖い…! たまたま偶然、偶然先生と会っただけなんです。だから注目しないで欲しいよ。 半べそかきそうな気持ちを押さえて僕は急いで自分の席を探すことにした。 早く座って皆の視界から消えたい。 そして存在を忘れてくれたら有難い。 ここはもう、今後大人しく静かにしておこう…そう思ったのに。 「おっ、お前いい席だったな」 「えっ?」 ククッと笑う先生に何のことだと訊ねる様に顔を見ると、その答えは直ぐに分かった。 先生が意地悪そうに唇の端をあげて笑いながらチョイと指を差した。 いったい?と思いながら指が示した場所を辿ると、誰も座っていない席がある。 いやいやいや。間違いだ、きっと。 「おいっ、早く席につけ」 顎で僕に指示した先生は、教壇に偉そうに立つと僕が座るのを待っている。 「はい」 返事をした僕は、縮こまってクラスメイトの視線から逃れる様にして席についた。 あぁ…間違いなんかじゃなかった。 座ってから視線の先にある黒板に貼られた座席表にはちゃーんと名前が書いてあった。 目を凝らしてよくよく見ても間違いなんかじゃない。 よりにもよって、何でここの席なんだろう。 それは奇跡的にも教卓の直ぐ前だった。 自動的に教卓のほぼ前になるから、先生が近い。 先生の近くってノートをとってるかとか、ちゃんと前見てるか常に見られていそうで正直嫌だ。 できれば端っこの後ろが良かったと思いながら小さく溜め息をついてしまい、慌てて口を押さえた。 「全員揃ったから始めるぞ」 先生の声に僕は姿勢を正して前を見た。 僕が席に着いて落ち着いたことを確認した先生は、教室を軽く見回した後よく通る男らしく、けれど甘さを含んだ声で名乗った。 「担任の湖城だ。一年間よろしく」 湖城先生って言うのか…。 湖城先生は、その整った顔で不敵な笑みを浮かべた。 ※全て嬉しく読ませて頂き書く力になっておりますが、諸事情によりコメントへのお返事を控えさせて頂きます。ご了承くださいませ。2020/6/11
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