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26.『桜ウォンテッド』
「ちょっ、どういう事だよ!」
さわさわ梢が鳴いた。
ない!
一輪も!
丘の上まで登山させて。
立派な桜の木があるって言うからッ
「咲いているとは言ってない」
「でも」
お花見の真っ最中だったんだ。話の流れからして咲いてると思うだろ。
「言い訳くらいしろ」
「しない」
耳朶を這った吐息
熱い息遣いに頬が燃えた。
「俺を信じたお前が悪い」
黒い岩肌の幹に背を押しつけられる。
花は舞い降り……
艶かしく濡れた桜色の唇に呼吸を奪われた。
「口実だよ、お前を他の奴から引き離す為の」
覆い被さった影は、今まで見た事ない悪い顔してる。
「逃げないとまたキスするぞ?」
ずるずる
背中からずり落ちて、お前の頭上に広がる空が……
黒い枝の格子の向こう側で蒼穹が笑ってる。
檻の中に囚われている。
「桜を見下ろすのも悪くないな」
俺の頬染まってるんだ……
ひらり
空から舞い降りたのは、
桜の唇
桜色の熱を啄む優しい温もり……
「なぁ、俺の幹も立派だよ」
ずんっ
「こここっ、ここでっ」
「もちろん♥」
「ギャアァァァー♠🌸」
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