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第24話 エイリムとサイリムの話
「僕のお父様とお母様はどうにも、こうにも、思いを伝えるのが下手だと思います。」
エイリムとサイリムが秘密基地で、会議を開いてます。
蒼い空のしたキラキラと光の中、獅子族ならではの髪を揺らし、密談は始まります。彼は真剣な顔つきです。
エイリムがしきる様子がうかがえます。
「僕も……そう思うな。いっつも、我慢してぶつかってる。お母様なんてお父様に食べられちゃうのに怖くないのかなぁ」
少しエイリムに比べて内気ではありますが芯の強いサイリムはエイリムの話に同意します。
しっかり人間になることができずに耳と尾はありますが人間の姿はとても愛くるしいものです。
生まれてから4年がたち、母と会えなかった2年の空白を埋めるかのように一時期は大変でした。
母の方も回復したばかりで体力が戻るまで車椅子の生活を送っていたものですから夜になると死体のように眠るので何度も父の方が息の確認のをしているところをエイリムとサイリムは見ています。
そうして、母が父のことをずっと目でおい、消えたらメイドや執事に聞いてることももちろんエイリムとサイリムも知っています。
さてさて、まだ彼らの密会は始まったばかり。
お菓子を持ち込んではいるが手をつける様子はありません。小鳥が食べてることにも気づいていないようです。
「僕は、お母様のこと大好きだし、お父様のこと大好きだし……なんで仲良くできないの?」
サイリムが首をかしげながらエイリムに訪ねます。
「僕に聞かれてもわからないよ!僕だってお母様のこと大好きだし、お父様のことも大好きだし!」
あらら、これはこれは愛らしい言い合いが始まりました。
ふと、エイリムが言います。
「なら、お父様とお母様にきいて見ようよ!サイリムと僕、どっちがお父様とお母様が大好きか!」
「うん!いいよ!だって……僕大好きなの負けないもん」
先にエイリムが駆け出しました。人間の足じゃ遅いと思ったのでしょうか途中で獅子の姿に代わり駆け抜けていきます。
サイリムもあとからのスタートでありますが負けてはいません。
両親がいつもこの時間帯にいる部屋につきました。
トントンと扉を叩いて中から開けてくれるのを待ちます。
おやおや、これはこれは開く気配がありません。
本当はいけないのですが、頭で少し開け耳をすますと……
「……テオバルト様ぁ……っすき……ん」
「葉月……はっ……愛してる……!」
エイリムとサイリムは見てないですよとその場から静かに立ち去りました。
彼らは満足です。
(こんなことよくあるから僕らはいいけど、他の人に見られたらどうすんだろ?)
と心配な点もありますが、お父様とお母様が仲良くしていたらエイリムとサイリムはあとはどうでもいいんです。
ちゃーんと思いを伝えてることも確認できたからね。
おしまい
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