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「ま、って、優弦……っあ、これ、こすれて、っは、や、やば……」  抱きしめたまま腰を揺さぶれば、兄さんはいやいやと子供がするように首を横に振った。  僕と兄さんの体は密着していて、その間を兄さんのものが擦れて、快感を生んでいるのだろう。背中に回った兄さんの手が、僕の背中に爪を立てる。しがみつくように、背中を引っかかれるが、全く痛くなかった。  兄さんが愛おしい、とか、そういう心理的なものもあったけれど、単純に力が入っていないのか、背中に指が滑る感触はあっても、爪が食い込むような感覚はない。 「こっちも、してほしいの?」  僕の腹に擦りつけられた兄さんの性器に手を伸ばす。少し触れただけで、兄さんの肩が跳ねた。 「やっ、ち、ちがっ……、っぁ、あっ!」  ゆるゆると、軽く上下に扱くだけで、兄さんのナカはきゅう、とうずく。 「両方、は、駄目だってぇっ、ん、あっ」 「なんで? 兄さん、気持ちいいでしょ?」 「だからぁっ、いい、っからっ、す、すぐイっちゃ――ッ」  兄さんが息を詰めたかと思うと、僕の手で兄さんのものが震えた。じんわりと、吐き出された欲の熱が手のひらに伝わってくる。 「は――――っ!?」  兄さんが息を吐き出し、身体が弛緩したのを見計らって、ぐり、と奥へ突いた。兄さんは高い嬌声を上げて、仰け反った。  ナカが今までにないくらいに僕を締め付けてくる。何度か揺さぶれば、もう、限界で――。 「っ……!」  僕は慌てて己が性器を兄さんから引き抜いた。抜くとほぼ同時に弾けた欲は兄さんの腹に飛ぶ。兄さんの腹周りはぐちゃぐちゃで、どちらのものともはっきりしない汗と精液が付いていた。 「うぅー」  ぐったりと兄さんは僕にもたれかかって来た。流石、発情中のΩというだけあって、兄さんの性器はまだ固い。無論、兄さんのヒートにあてられた僕も似たり寄ったりなのだが、息が上がり切ってしまい、すぐに次に行ける程ではなかった。  あまり兄さんに無理をさせるのも良くないし。 「……なんで外に出したの」  兄さんは不満そうな声を上げた。もたれかかっていて、その表情は見えないが、きっと拗ねたような表情をしているに違いない。 「なんで、って子供出来たら困るでしょ」  兄弟や姉妹などの血縁関係で番になることは黙認されている。まあ、勿論いい顔をされるわけではないものだが。  しかし、仮に三親等内で番になる場合、子供をつくることは禁じられていた。バース、性別関係なしに、血縁関係者で子供を作ることは生物学的によろしくないので、そこは仕方あるまい。  むしろ、結婚できない普通の人たちより、番、という確固たる関係を結べた僕らは恵まれているというべきだろう。 「オレと優弦の子なら、絶対可愛いでしょ」 「そりゃまあ……そうだろうけど」  しかしまあ、二卵性でありながらそっくりな顔立ちなので、どっちに似たか分からなくなりそうではある。 「……優弦」  もたれかかっていた兄さんが、ぐりぐりと額を僕の肩口に擦りつけてきた。 「どうしたの、兄さん」 「……オレ、今、初めてΩでよかったって、思ってる」  兄さんの口からまさかそんな言葉が出てくるだなんて思わなくて。僕は思わず固まってしまった。あれだけ、自分がβじゃなかったことにショックを受けていた兄さんが、まさか。  僕の驚きと動揺が伝わったのか、驚きすぎ、と兄さんが笑った。 「だって……」 「……考えてもみろよ。普通の兄弟だったら、お前とこうして結ばれなかった。そりゃセックスはどんな関係でもやろうと思えばできるけど、Ωとαで、番になれるからこそ、満たされるんだ。……だから、Ωでよかったって」 「……にい、さん」  愛してるよ、と小さく呟いたかと思うと、兄さんは僕にその言葉を口移しするかのように、キスをしてきた。  僕はそれに応えるように、兄さんを抱きしめるのだった。 □■□ □■□  世界が僕の恋を肯定してくれている。  兄さんが、僕の恋を叶えてくれた。  しまい込まざるを得ない想いなど、もうどこにもないのだ。

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