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言い伝え
『獣人、人間と交わる可からず。』
家にある古書の一節を、父さんはいつも細い指でなぞっていた。そしてその時は決まって哀しそうに眉を下げるのだ。その横顔は幼い俺の心に焼きついた。
一度、聞いたことがある。
『何でそこばかり読むの?どんな意味なの?』
すると父さんは弱々しげに微笑みながら答えた。
『こんな決まりのある今の世が嫌だと思って。』
よく分からないよと首を傾げれば、父さんは可笑しそうに笑った。
『ヒヨリは自分の気持ちに正直に生きなさい。負けては駄目だよ。』
何に負けるのかと聞いても、ただ笑うだけでそれ以上は何も言ってくれなかった。
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