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5 脅迫

 それから俺はしばらく何事もなく穏やかな日々を過ごした。健二は週末になると必ず俺を潰しかねない勢いで抱いてくる為、出かけることはほとんどない。ただ、これは健二なりに家に引き留める理由作りだったように思える。いつあいつに出会うか──健二なりに心配だったのだろう。  ちなみに教頭の仕事の手伝いもしているのか、あいつは今のところ保健室に来ていない。放課後はそそくさと帰っているから遭遇することもない。このまま会わなければいいな、と思っていたが──甘かった。  体育祭が3日後にせまった放課後。さすがに生徒会は忙しいのか、俺1人で帰ることとなった。本来なら部活生も無視して帰るのだが、怪我人が駆け込んできた為対応していた。それから慌てて帰ろうとしたが──。 「やあ」 「……! 」 「ふふ、つーかまえた」  楽しそうに笑う、(あいつ)が保健室に来る方が早かった。  俺は無視して帰ろうとしたが、引き留められた。しかもよりにもよって、ベッドのある個室に連れ込まれた。(ご丁寧に鍵までかけやがった) 「ああ、安心して。別にヤろうとはしてないから。たださ、ちょっと聞きたいことがあって」 「……何」 「翔馬って、生徒会長と付き合ってる? 」 「──」  ああ、バレたのか──。つくづく、こいつの凄さを思い知らされる。高校生の時は内緒で同級生と付き合っていたが、必ずすぐにバレてしまった。そして自分が何股もしていることは棚に上げ、別れるようにと迫った上で激しく抱かれるのだ。  だが、今回はヤらないと言っていた。どうするつもりなのだろうか。 「バレたら結構ヤバいよね? 翔馬、間違いなく追い出されるし、教頭が一番頭固いから許してもらえないだろうし」 「何をすればいいんですか」 「食事、一緒に行こうよ。二人きりでゆっくりと過ごすだけでいいから」 「そんなこと言って、また──」 「ヤらないから、安心して」  安心なんて出来ない。しかし、文句を言ったって無駄だろう。いつも自分勝手なのだから。 「じゃあ早速行こうか」 「え、ちょ──」  俺はこいつにまた振り回されるのか……。  * 健二視点  予想より早く終わったので、急いで帰宅する。時間は18時過ぎ。もしかしたら、翔馬さんは食事中かもしれない。  そう思って扉を開けようとするが、開かない。まだ帰っていないのだろうか。 「そんなはずは……」  ラインには何も連絡がない。外食するなら、一言連絡するはずだろう。  胸騒ぎがして、ラインを送る。すると、返事がすぐにきた。 『もう少ししたら帰る。連絡忘れててすまん』  翔馬さんもうっかりするのだろうか……? まさか、あいつと……?  翔馬さんが帰宅したのはそれから約1時間後。全然少しじゃない上に、あの野郎が隣にいた。翔馬さんは気まずそうだ。 「こんばんは、生徒会長さん。うちの翔馬と付き合っていると聞いたよ」 「……」 「君もバレたらマズイだろう? 」 「──何がしたいんですか」 「そう睨まないでくれ。たまにご飯に行くだけだから」 「そう、ですか」  年上であることに加え、それなりに権力のある人だ。言い返すことは出来ない。ただ奥歯をぎりっと噛みしめ、頷く。  彼は不適に笑うと、翔馬さんから離れてマンションを去った。彼が視界から消えると、翔馬さんはため息をついた。 「最悪だ……」 「大丈夫ですか」 「あ、ああ……。昔からああなんだよ、あいつは。自分勝手で強引で──他人の幸せを壊すことを楽しんでいる」 「最低ですね」 「だろ?」  翔馬さんは苦笑いを浮かべた。

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