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第88話 牛丼よりも愛を大盛、お願いします(12)
おっさんに抱かれた翌日。
当然、腰はガクガク、すぐにはまともに立てそうもなかった。身体の節々が痛いのも、あんだけ可動域広げたり、折り曲げたりしたら、仕方がないと思う。多少の運動不足は否めないけど、普段使わない筋肉を使ったせいだもん。
昨夜のことを思い出して、恥ずかしくなる。
でも、うん、俺の孔、ピリピリするけど壊れてはいない模様。人間の身体の不思議を実感する。
「……俺は出かけるが、お前はここで休んどけ」
「すみません」
その上、ガラガラの声。こんなの風邪を引いた時以来だわ。
こんなんじゃ、大学行けない。そもそも、この状態じゃ部屋からも出られそうにもないけど。
ベッドの脇に立ってるおっさん。俺と違って、すでに着替え始めてる。
差し出されたミネラルウォーターのペットボトルを素直に受け取ると、素っ裸の上半身だけ起こして、ヒンヤリした水を飲み込む。
……うめぇ。
ホッと一息ついて、初めて自分の身体に、赤い発疹みたいのがいくつかあるのに気付いて、ギョッとする。
これって、いわゆるキスマークか。お、おっさん!!!
「悪いが、飯、こんなんしかないんだが」
オタオタしている俺をよそに、差し出されたのはコンビニの小さめのビニール袋。
中を見てみると、おにぎりが二つ。あ、漬物に卵焼きもだ。いつの間に買い物に行ってくれてたんだろう。そのさりげなさに、感動を覚える。
壁際にある大きな鏡に向かって、真面目な顔でネクタイ締めてる姿に、やっぱ、カッケェなって見惚れる俺。スーツなんて、俺なんかじゃ着せられてる感、というか七五三感?、半端ないし。
ボケ~ッと見てた俺に気付いたおっさんは、俺の頭を大きな手でグリグリと撫でる。子供扱いされてるのはわかっても、なんか嬉しいって気持ちの方が強い。
だから、つい、二ヘラッとしてしまう。
そんな俺を見て、おっさんもちょこっと口元に笑みを浮かべたかと思ったら、ひょいっと俺の顎先を指であげると、チュッと唇を重ねる。
チュッ、チュッと何度も口づけるから、微かに俺の息子が兆してるんですけどっ!
確実に顔が真っ赤になってる自信あるぞ。
そんな俺を見て、ニヤリと笑うおっさん。
「俺が帰るまで、家にいろ」
するりと俺の頬を撫でると、おっさんはさっさと部屋を出て行った。
なんだよー、なんだよー、カッコよすぎるだろうー!
ヤのつく職業なのに、じぇんとるまん、ってなんだよー!
しばらく、一人で大きなベッドでのたうち回ってた俺は、おかしくはないと思う。
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