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第37話
とはいえ迷惑をかけたのでこれを! と金貨をジャラジャラ渡すわけには、いかない。
お詫びはなにか、キラキラしたものを渡そう。俺が魔力で少しばかり光りながら渡せば、より喜んでもらえるかもしれない。
照明に光を灯す魔法を、自分の周りでやればいいのだ。お詫びのキラキラを期待していてほしい。
内心で光る決意をしていると、ライゼンさんは財宝の棚が綺麗に整列した部屋の端を、指差した。
「私があちらから確認いたしますので、シャルさんはあちらからお願いできますか?」
「ん、わかった」
「なにかあったら、遠慮なくお呼びくださいね。文字通り飛んでいきますよ」
ライゼンさんはフフフと微笑み、夕日色をした背中の翼を軽くはためかせた。
不死鳥の美しい翼は、ここの財宝にも引けを取らない。
頼りになる彼に微笑みを返して、俺はよしと意気込み、数のチェックに取り掛かった。
♢
「シャルさん、進捗はいかがですか?」
「こちらもちょうど終わったところだ」
それから数時間後。
空欄の最後の一つを埋めてヌケモレの確認をしていると、バサバサと翼をはためかせてライゼンさんがやってきた。
どうやらほぼ同じくらいに終わったようだ。
ライゼンさんは俺から書類を受け取ってパラパラと流し見すると、柔らかく満足気に微笑む。
「うん、私の記したものとも相違ない。これが最終的な数字で間違いないようですね。お手伝いありがとう御座います」
「こちらこそ。仕事にかこつけて価値のある物を見られたのでよかった」
最終確認は恙無 く完遂できたようだ。同じく笑みを返す。
膨大な量の財宝だったが、基本の出入りが少なかったので確認もさほど大変ではなかった。
金庫の金貨もわかりやすく纏めて保管されていたので、追加分を数えるだけで問題なかったしな。
ライゼンさんは書類を召喚魔法で収納し、想定より早く終わったと喜んでくれた。
「時間が余ったので、せっかくですから他の宝物をご覧になりますか? 危険のない物だけになりますが……」
「おお、魔界の宝物は興味がある。よかったら、お言葉に甘えさせてもらってもいいだろうか」
「フフフ、もちろんですよ」
財宝じゃない──いわゆる歴史的魔術的に価値のある物に興味を惹かれて、俺は好意に甘えていろいろと見せてもらうことにした。
魔界の歴史か、すごく古そうだ。
どんなものがあるのか想像が難しく、ウキウキと浮かれてしまう。
どこか子どもの頃に戻ったように冒険心がくすぐられてきて、年甲斐もなく高揚してきた。
ソワソワとする俺の手を、ライゼンさんは「奥の部屋へ参りましょう」と優しく引いて、歩いてくれる。
なんと、女性の指のように滑らかだ。
力を入れて握ると折れてしまいそうで、そっと握り返すにとどめた俺である。
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