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第43話

俺縁の品だと言われても、わかるものとわからないものがあって本人も首を傾げる。 一番は、昆虫標本みたいに綺麗に壁一面の棚にお菓子とお菓子の包み紙が日付入りで入っていて、驚くよりも魅入ってしまった。 なるほど、召喚魔法で隠し持って腐る前に暇を見ては、欠かさず保管してるのか……愛が深いぞ。 嬉しい反面俺も返さねば、と思うのだが俺は部屋においてある小さな宝箱で事足りているからな……俺は薄情なのだろうか。 自分が冷たい男な気がしてしゅんとすると、ライゼンさんは「魔王様の独占欲と執着が異常なので普通でいてくださいね」と必死にアゼルコレクションを阻止された。 そうだな、アゼルの使用済みバスタオルを確保していないからと言って、俺の愛が薄いわけではない筈だ。 「おお……いつかのアーライマの花束だ。タイトルは〝御神体〟」 ……本当に御神体にしたのか。 瞬間冷凍したみたいに綺麗に凍っているアーライマは、ちょっとした祭壇のように祀られている。 アゼルは本当に俺のことに関して何事も全力だな。 そして貰ったものや要らなくなったものしか集めていない所が、妙に紳士だ。呆れる事はなく、感心してしまった。 「〝いい働きをしたヤツ〟。コレはアゼルがスウェンマリナの視察で着た服だな」 「褒められたものもコレクションするんですね……それじゃあこれは?」 「〝赤面役得〟。コレは……書類の書き損じか。俺の字だな……んんん、保存されると恥ずかしいぞ…」 「ちゃんと感情通りに命名しているようですが、さっぱり背景が見えてこないですね……このタイトル」 「そうだな、俺もよくわからんぞ。〝葉〟。……ふむ、葉っぱそのものだ」 タイトル通りにただの葉っぱその物を疑問符だらけで凝視する。 どう見てもガラクタなのだが、どういう基準で保存してるんだろうか。 俺とライゼンさんは熟考の末、アゼルのコレクションは見なかった事にするとした。 曰く、〝集めていることを知られるのはおろか、本人に見られるなんて魔王様は羞恥心で気絶するかもしれません〟との事。 逆の立場になって省みると、恥ずかしいかもしれない。俺は別に気にしていないのだが、アゼルは照れ屋だからな。 そんな訳でほろ苦い気持ちを抱いて歴代魔王コーナーに背を向け、見ないフリして残りの歴史物を見て回る事にした。 「この辺は絵画だな。やたらイケメンの絵画が多いが……こんなに綺麗なのに表に出さないのか?」 「そうですね、その辺りの絵画は数代前の女性魔王様が趣味で集めてらした物です。貴重な物ではないのですが、そう言えば飾ったりしませんね…」 ライゼンさんは一画に沢山置いてあった絵画を腕を組んで眺めながら、思案顔になった。 こんなに沢山美形の絵画ばかりあると、ホストクラブの指名表みたいな感じがする。 様々なタイプの美形が並ぶ辺り、その女性魔王はストライクゾーンが広かったようだ。

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