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第50話※

体内に湯が入ってくると、背筋がゾクリと粟立って唇を軽く噛む。 上に乗ってする事はあるが、アゼルは力が強いので俺を持ち上げる事など容易だ。 なので俺が全面的に自分だけで動くなんて、多分初めてだと思う。 そんな若葉マークの俺にこの仕打ち。 アゼルに尻を掴まれながらも俺は息を吐いたり止めたり工夫し、いつもしてくれているようになるべく気持ちよくなって貰おうと動いた。 「ん、う…アゼル、っ、手…離さないとやっぱり、染みる…、」 「ちゃんと締めりゃ、大丈夫だ。お前のエロイ顔みてると、いじめたくなる」 「あっ、ぁ…っう、こういう時、アゼルは意地悪だ…ん、んっ」 「んっそうか?……いやかよ…?」 情けない表情で訴えても楽しそうに弄んで離してくれないから意地悪だと言うと、自覚がないようでキョトンとされる。 アゼルは本当は嫌なのかと思ったのか、唇を尖らせて不満そうにするがその実焦っているのが目線の泳ぎですぐにわかった。 そういう事をされると何も言えなくなる。 だけど限界だ。 中に染み込む湯が気になってうまく集中できず、なのに抽挿の度に快感がやってきてもっとと求めてしまう。 拙い動きで動かしていた腰を止め、ズプ、と深くまで飲み込み、アゼルの頭を抱え込んで濡れた髪にキスしながら囁いた。 「ふ、ぅ……意、地悪されるの……嫌じゃないから、もっとしてくれ……活きのいい事を言ったが、自分じゃ物足りない……」 「っ」 最後の方はちょっと情けなかったので、小声になってしまった降参。 それでもアゼルにはちゃんと聞こえたようだ。 抱きしめた頭が腕の中でビクリと跳ね、間を置かず俺の胸に牙を立てないように噛み付いた。 「ぃあ…っ」 突然の甘噛みに驚き、予想外に間抜けな声が出る。 逞しい腕で腰を持ち上げられ、バシャっと湯船を揺らしながら、深く奥を穿たれた。悲鳴のような喘ぎ声が漏れる。 強張る力を抜き取られると体が反転して、溺れさせられるのかと焦燥に駆られた。 咄嗟にアゼルの首に腕を巻き付けると俺の体を支えながら真っ赤になって睨みつける、お湯も滴るいい男。 「の、のぼせたか…?」 「うるせぇ、俺はお前からの煽り耐性ゼロだぜ、クソ…」 「んっ、う、ンン」 急にどうしたと意味を込めて尋ねたのに返事もさせてくれず、もう黙っていろとばかりに口づけられ、俺の言葉は全部呼吸ごと奪われてしまった。 それと同時に、すっかり場所を覚えられている中の弱い所をグリっと強く抉られる。 途端、目の奥が白く電流を発し、背骨をしならせ仰け反った。 「ンん…ッ!ん、っ」 そうなったらもう、アゼルの背中に爪をたてないように気を使うのが精一杯で、ゆさぶられる事しかできない。 悲しきかないつもの事だ、身に染みている。 ──どうやら仕方ねえな、と手伝ってくれるといいなぐらいの気持ちのお強請りは、意地悪上等だと煽ってしまったらしいぞ。 スイッチのわからないアゼルのそれをうっかり押しすぎてしまう自分に、呆れまじりで頭を抱えてしまいたくなる。 湯が汚れるのでできれば湯船でイキたくないな、と思ったが、そんな細やかな願いは当然聞き入れて貰えないのであった。

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