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第134話(sideアゼル)

いちいち言わねぇけど、今いる幹部はみんなできた奴らだ。 俺を怖がったり淘汰したり馬鹿にしたりしない。変な事をしたら遠慮なく言ってくる。 別にそれが馬鹿にしてるわけじゃないってわかるくらいには、俺も人のことがわかるようになってきた。 ライゼンが淹れてくれた紅茶を飲むと、なんとなく思い出す昔のこと。 あの時は確か、フォークがわからなかったんだよな。 テーブルマナーの本とかなかったし、飾りか何かだと思って手で食べたんだ。 給仕の視線が居心地悪いとは思ったが、なにが駄目なのかわからなかった。 したら次からフォークもナイフもなくて、俺はなんとも思わないで手で食べた。 まぁお察しで嫌がらせだったわけだが……貴族連中との会食で、見事に恥を晒した。 だからあんま誰かと飯を食うのは好きじゃない。負けず嫌いで勉強したから今はできるが、それとこれは違う。 今の俺は大体毎日シャルと食事をする。 それを気にしたことはない。寧ろ楽しくて幸せで至福の時だ。 食事は、信頼するやつとしかしない。 心臓を刺されたこともあるのに、刺されてなくてもそれよりずっと胸が痛いんだぜ。 それも今は、どちらかというとドキドキしすぎて胸がいてぇばっかりだ。 俺は結構、アイツの攻撃にはやわらか魔王な気がする。 閑話休題、と。 そんな事を考えて、ふんふんと機嫌よく紅茶を飲んでいると、マルガンがビシッ!と俺達を指差してゼオに駄々をこね始めた。 「ちょっ、あれ見てみ!?同じサボり犯に対して片や紅茶を差し入れる補佐官、片や氷漬けにして頭を破裂させる補佐官!おかしくね!?」 「そういう事は口答えする前に目の前の書類全てに目を通してサインしてから言ってください。俺は無駄が嫌いなので」 「ヒッ、いやぁぁだぁぁ〜!女の子!せめて女の子連れてきてくれなきゃ頑張れないよぉぉ〜!」 「仕方ないですね……」 騒がしく駄々をこねるマルガンに、ゼオはピクリとも表情を変えずに近づく。 その瞬間──俺のカンがキュピンと反応した。 「んじゃあ俺ァ空軍基地に帰るぜ」 同じく第六感が警鐘を鳴らしたのだろうガドが、さっさと執務室を出ていった。 呆れたライゼンが空のカップを下げて、俺の執務室から繋がる自分の執務室へ逃げていく。 うん。 今いる幹部は、できた奴らだ。 「結界」 先を予知して机ごと俺を包むサイズの魔法陣結界をフォン、と出現させ、事が済むまで俺は今日の晩ご飯について考えることにした。 今日はすこぶるいい日だかんな、帰ったらまずはシャルの血を貰ってイチャついて、それからゆっくり二人で飯を食う。 「え、ゼオ?ゼオにゃ?なんでそこ持っちゃうの、まってまってやめてそこ!」 「仕事するのに必要なの、女の子でしたっけ?」 そうだな、メニューは赤身肉にするか。 なんかシャルが精力剤を気にしていたからな。 まだ全然だと思うけど、効果があっても悪くねぇ。 たくさんできるに越したことはない。 「氷、弾け飛べ」 パァンッ! 「ア゙ーーーーーーーッ!!?!?」 ゼオの一言で氷漬けになったマルガンの下半身のアレが弾け飛び、結界にビシビシ当たる赤い氷。 響き渡るスケコマシの悲鳴。 痛覚がない不死身のマルガンにもばっちり心にダメージがある。 「女の子になったでしょう?」 それじゃあ仕事しましょうか、と何事もなかったかのように書類の束を差し出すゼオは、正真正銘鬼畜だった。 ま、俺が行った時からサボってて、別れてからもサボってたサボり魔には、あれくらいやんねぇとな。 「汚え花火だぜ……」 恋愛マスターの晴れ姿を見届けて、俺はウキウキとディナータイムを心待ちに、純な心で残りの仕事を終わらせにかかった。 六皿目 完食

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