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第133話(sideアゼル)
「ゼオ、書類が汚れるだろ」
「まるごと復活するんで大丈夫ですよ」
しれっと言われた。
まあそのとおりだけどよ。
マルガンはナイトリッチ。平たく言うと痛覚を感じないで、魔力ある限り木っ端微塵でも復活する上級魔族だ。
普通の上級魔族なら手足がもげても復活できるが、脳や心臓が木っ端微塵の原型なしだと死ぬ。
流石に俺も死ぬ。
まぁ昼間にガドを三十匹は持ってこいって感じだけどな。
そんな魔王より、自己修復力が強いのがマルガンなのだ。
だからマルガンは笑死魔将。元々半分死体だからな……笑って死んで、すぐ蘇るぜ。
閑話休題。
案の定、マルガンの撒き散らされた脳みそや血肉が、数秒後にはまたチャラ男の頭部を形成する。
復活マルガンはゼオの容赦ない爆裂に、すっかり青ざめた。
「ゼオにゃーなんで俺っちだけおこなのっ!?魔王様もサボってたじゃん!」
「魔王様はこのように、サボったとしても後で溜まった仕事も片付けてくれますし。まぁポンコツスイッチ……お妃様関連で暴走しただけなので。貴方は魔王様と別れてから、城下町で娼館に入り浸っていたでしょう」
「ねぇだからって大事なイチモツ普通凍らせちゃう?お仕事終わるまで身動き取れないとかアリ?なくない?ヤバくない?俺っち椅子と氷でまぐわっちゃってんよ?」
「残念ながら貴方が不死身のナイトリッチじゃなければとっくにイチモツ切りとってゴブリンの餌にしてますよ」
「男の勲章ゴブリンの餌ってぇっ!!」
強制書類地獄に嘆く陸軍長を助けるお人好しは、この場にはいない。
〝冷血〟の名に相応しいゼオは、殴り合いなら間違いなくこの中で一番弱いのに一番自分より下と決めた者に情がない男だからだ。
そんな本日の仕事コミコミ男子会メンバーは魔王、宰相、空軍長、陸軍長、陸軍長補佐官で全て。
クックック、人間国の一つや二つ、このメンツなら滅ぼせるぜ。やってる事は猥談の惚気だが。
邪悪な魔王スマイルを浮かべる俺に、ライゼンがそっと紅茶を淹れてくれた。
魔王の補佐官でナンバーツーである宰相。
マルガンにとってのゼオは俺にとってライゼンだ。
「……ライゼン、まぁその、なんだ……お前は仕事もできるし、魔族関係も出来た奴だ。俺の宰相がお前で、よかった」
「ええ……ありがたきお言葉、身に余る光栄です。私は貴方様を心より尊敬していますよ。素直じゃないのと口と目つきが悪いだけで、勤勉で努力家でまっすぐですから」
「!ハッ!この俺が勉強なんかするかよ、できないことなんざねぇからな」
「フフフ、そういうことにしておきますね」
ゼオを見てからライゼンを見るとどれだけ従順に尽くしてくれているのかがわかり、労りの言葉をかけるとなんだかむず痒い感じで笑われた。
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