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第171話(sideリューオ)
裏口から飛び出してきたアゼルだが、お散歩形態だった彼がなぜこうなっているのか。
それは、次の公演のトップを飾った後追いかけそびれたことに気がつき、焦りのあまり形態変化が中途半端に解けた状態になっていたのだ。
そうとは知らず、巻き添えでストーキングされていたリューオ。
奇跡かよ!と思わぬ助っ人に喜び、細かいことは気にせず巻き込むことにした。
ズカズカと鬼気迫る勢いでこっちに向かって歩いてくるアゼルに、心の底から感謝する。
現金な勇者である。
そして魔力を抑えた妙ちきりん男と言えども、顔だけはすこぶるイイのが魔王。
イケメンを見た少女は、きゃあ!と女の子らしい声を上げて大興奮だ。
「あっやだすごいかっこいい……!顔が小さい!手足が長い!目つきがエロイ!隣に立たせたくないのに立ってほしいタイプの美形!」
「オイやめとけや、コイツ中身地雷だぜ。変態で収集癖のスキル持ちで、独占欲と執着が異常な愛ヘビィ級チャンピオンだかンな」
「またまたイケメンがそんなわけないじゃないですか。って、ハッ!?オーガさんやっぱり私を!?」
「このバァァァァァァカッッ!!」
しかし、それを善意で引き止めたリューオの言葉を前向きに捉えたことで、盛大なバカに塗り替えられる。
せっかく人が善意で地雷、いや世界滅亡級爆弾だと教えてやったのに、どうしようもない女だ。
魔族は寝取りオッケーの横恋慕上等な種族なので、彼女が特別どうしようもないわけでもない。
だがリューオはここで、きっぱり縁を切らねばならなかった。
誤解に誤解を重ねる展開を避けるためだ。
「このクソッ」グイッ
「ちょっと、」
「あ?」
ところ変わってシャルから目を離したリューオに一言文句をと思ったアゼル。
だが突然、グイッとリューオに腕を引かれ、無理矢理引き寄せられた。
意味がわからない。
されるがままに肩に腕を回され、まるで仲が良いみたいな密着をさせられる。
意味がわからない。
そしてスゥ、と深く息を吸い込んだリューオは、ギロンと素で睨みつけ、ガオウッ!と虎よろしく吠えた。
「いいかオイ?俺は──男が大好きなガチホモなんだわ。だからテメェとは、天地がひっくり返っても付き合わねェッ!あきらめろッ!」
「「え?」」
だから、意味がわからないと言うに。
少女とアゼルのマヌケな声がぴったり重なった。
どうしようもないだろう理由を作ったリューオは、ドドンッ!と効果音でも背負いそうな様子でとんでもないことを言い切る。
ちなみにリューオはバイであるので、本当のところは女性も守備範囲だ。
寧ろ女性好き寄りのバイだ。
そして言葉を理解した少女が神妙な顔で頷いたことで、状況がわからないのはアゼルオンリーであった。
魔界の最高権力者が型なしである。
やはり勇者は唯一無二の魔王の天敵なのだろうか。
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