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第172話(sideリューオ)✽

「それは……まぁどうしようもないですね……!」 「だろう」 「悔しいですが諦めましょう」 「……なにがだ?」 リューオの言葉に神妙に頷いた少女。 どうやら納得してくれたようだ。 ちゃんと少女にお断りの旨を納得させ、荷物も運んだので、リューオはようやく人違いの責任も果たしたのである。 「私そういうの嫌いじゃないですし」 「だからなにがだ?」 対して、去り際にかけられた言葉の意味もわからず、なんのために腕を組まれて馬鹿みたいな宣言を聞かされたのかもわからず、リューオに文句も言い損ねたアゼル。 おそらく今日一番頑張っているのに、一番予定通りに進まなかった人物だろう。 アゼルは少女にリューオとイイ仲(・・・)扱いされたことに気がつかず、終始?を浮かべるばかりであった。 ──かくして。 事情を聞いたリューオは中途半端な形態変化を解かせ、お詫びとしてアゼルのストーキングを手伝うことにした。 リューオはムシャムシャと串焼きを食べながら、ストーキング最終地点の修羅場に耳を傾ける。 「たまたま(・・・・)街にいた俺はな?ばったり逸れたリューオと合流して、ランチタイムと街ブラするお前らを見てたわけだが」 「あぁ」 「浮気だ」 「なんでだ」 ものの見事にストーカーしていたのを誤魔化しつつ、自分の不満だけを伝えているアゼルだ。 魔王式浮気論発動に、遺憾の意を示すシャル。 それをジト目で睨む魔王。 壁に背を預け、目を閉じている間男。 「シャル、俺の言いつけは?」 「知らない人について行かない、変なものを食べない」 「初対面の無表情野郎について行ってマンドラゴラジュース飲んでたのはどこの誰だ?」 「ぁ、あぅ……」 リューオはぐうの音も出ない正論を言われ、ぐぬぬと呻くだけのシャルに、呆れ返る。 だから出発前に言ったのに。 やれやれと肩をすくめるが、自己肯定力がミソッカスのシャルはちっとも自分を愛護しない。 そればっかりは魔王に同意だ。 逸れたのが悪かったが、だからといって初対面の男にホイホイついて行き、城下町を堪能するとは。 幼稚園児より目が離せない男である。 しかも恋愛に男女の垣根があまりない魔界なので、いつものタラシスキルを発動させていた。 シャルは所謂いいやつなので、いい人止まりのため、あまり恋をされたりはしないらしい。 今回はレアケースだろう。 ……いやまあ、自分も初対面の女について行って修羅場を堪能してしまったのだが。 ホイホイ惚れられてもしまったのだが。レアケース中のレアケースだチクショウ。 「あー……空広ーい……」 修羅場に耳を傾けながら、自分の修羅場を思い出したリューオは、わかりやすく現実逃避に空を見上げる。 空の雲がユリスに見えた。 なるほど、自分は相当あの少年が恋しいらしい。 ただのデートの下見が、とんだ修羅場デイズになってしまった勇者コンビであった。 七皿目 完食(続) (After→シャルさん頑張るの巻)

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