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第193話(sideユリス)
いいこすぎて気に食わない。
けど、気に食わないって言ったって、どうせその文句も受け入れられる。
だから好き。
言わないけど。
眩しくて自分が嫌いになっちゃいそうなくらいだけど、コイツは僕を嫌いにならないだろうからなぁ。
「お前って僕みたいなひねくれ者にとっては毒だよね、ムカつく。なんでもないようにありのままにされたら、溜まったもんじゃないよ、馬鹿」
「う……褒められたと思ったらそんな楽しそうな顔で俺のことを罵倒するなんて、気分はもう落ち着いたのか?」
「フンっ、ムカつく。まったく可愛いやつだよねお前。斑ネズミの寝顔みたいなふやけた微笑み浮かべちゃってさ。僕の隣にいることを許してあげてるんだから、当然だけど。でも僕の次くらいにだからね!」
「んむむ」
ムニュムニュと右頬を引っ張ってやると、シャルは困り顔でされるがままだ。面白い。
面白くて笑ってしまう。
うん……今なら普通に笑える。
一人でしゃがみこんで悶々としていたのが、前を向き始めた。
掴んでいた頬を離し抱きつき直して、上目遣いにシャルを見上げる。
「今更好きだなんて言えないけど……〝八つ当たりしてごめん〟ぐらいは言えるかな?」
「あぁ、言える」
「アイツ、悲しそうだった。追い出したくせに、また僕と会ってくれると思う?」
「もちろん」
「魔王様が理想であんなに恋してたのに、ダメになったから鞍替えしたって笑われるんじゃない?」
「馬鹿を言うな、恋の相手は選べないだろう?」
「あははっ! うん、そのとおりだね」
声を上げて陽気に戯ける。
どこかで聞いたようなセリフの説得力が凄いよ。
お前なら絶対選んだ相手を心底愛する。可能性が露程もあるなら諦めないだろう。
「…………こんなウジウジした僕でも、上手に素直になれるかな?」
ニコッと笑ってそんなことを言う。
わかりきったことだけど、シャルに言葉にしてもらえると僕はなんだか前向きになるから。
するとシャルは同じようにニコッと笑って、見透かしたように頷いた。
「大丈夫だ」
まったくなんて安心感。
流石僕の──友達、だよね!
僕らは笑い合って体を離して、美味しい紅茶とスコーンに手を付ける。
ティータイムの仕切り直しだ。
ため息味の紅茶なんて飲み干して、やってやるよって気持ちを込める。
あぁもう、下らないことで痛感しちゃった。
「独占欲を感じたら手遅れなんだから、諦めてそっぽ向いてないで速攻流し目誘惑でしょ。魔界一の魅惑の美少年、ユーリセッツ・ケトマゴを舐めないでよね馬鹿勇者!」
「ふふふ、ユリスは格好よくて可愛くて、最高の美少年だ。子猫のリューオを、押し倒してやればいい」
──残念ながら、僕は嫉妬深くてわがままで気まぐれで嘘つきでアイツのことが好きな、一人の男だってことなのさ!
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