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第195話(sideリューオ)
絶縁の危機な悲しみが押し寄せてきて、俺はぐったりとソファーに倒れ伏し、魔王に弱々しい目線を送った。
「なぁ魔王、ユリスはなんでテメェが好きなんだ? 顔か?」
「知るか。アイツは俺の言うことに大体〝魔王様が僕にお声を!〟とか〝魔王様は存在が尊いです!〟的な反応しか返さねぇから、よくわかんねぇ。はいしか言わねぇしな」
「あ。あぁー…………あー、なんか、わかったかもしんねぇわ……俺無理じゃね……」
興味なさそうに書類を片しながら返す魔王に、俺は死んだ魚のような目のまま、薄ら笑いを浮かべる。
わかったぜ。
ユリスの魔王に対する態度は、例えるなら、そう。同担拒否の魔王激推し夢女ガチ勢……だろうな。
はー……古参ユリスと新参シャルか……。
電撃結婚で魔王ロス、狙い目はフリーの今だろうに俺ってやつは、チャンスを最後にフイにするゥ……ッ!
魔王は俺の好みの容姿でも性格でもないから、俺は全然キュンとこねぇ。
でもあいつらには、奇跡的に可愛く見えてるらしいしな……恋って洗脳じゃね。
自分の片腕を鉢を抱くために使って、もう片方で書類を書く魔王を呪い混じりに睨む。
近くで物を操る魔力操作でペンを浮かせ、書類の処理を二つ同時進行する魔王。俺を無視し続けるとは、ブレねぇな。殴りたい。
だがこれでも、大事な〝アイツ好みの見本〟なのだ。
「なぁ魔王、どうやってユリスに好かれたんだよ」
「知るか。……んん、もしかしてお前、今あれか……? あー……チッ、仕方ねぇな……」
「あ? ンだよ」
部屋を追い出されても諦められなくて、また突撃するためにヒントを得ようと、仕事の邪魔をする。
すると魔王はようやくまともに俺を見て、微妙な表情になった。
そしてなにを思ったのか立ち上がり、抱えていた植木鉢を陽のあたる温かいところへ丁寧に安置して、そっとひとなで。
悠々と歩き、俺の向かい側のソファーへ腰を下ろす魔王。
当然の顔をして腕と足を組み、ふんぞり返る。
「よし、聞いてやる。好きに語れ。こういう時は思うまま、語らせてやりゃいいんだろ? フッ。シャルも恩人も、こうした。間違いないぜ」
「は? …………え。もしかしてテメェ、俺がマジで落ち込んでるから、慰めようとしてンのか」
「!? してねぇよッ」
突然の奇行にポカンとして、思い至ることを言う。
それが図星だったらしく、魔王はツンとそっぽを向いてグルグル唸りはじめてしまった。してんじゃねぇかこの野郎。
俺はソファーに顔を埋めつつ横を向いて、珍しく俺に優しくした魔王を観察する。
「チッ。シャルの友達であることを感謝しやがれ。低脳人間はなにも考えず、さっさと語れって言ってんだ。ニャーニャーと無駄鳴きすんな」
魔王は柄にもないことをやってみたのに滑り出しがうまくいかず、さり気なさが皆無な現状に、不貞腐れて舌打ちをした。そして俺はバカ猫じゃねェぞ駄犬が。
……ハッ!
ツンデレ……そうだ、コイツユリスと同じツンデレじゃねぇか。閃いたぜ。
魔王をユリスに見立てて、ツンデレ心理を聞けばいいンじゃね?
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