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八皿目 ナイト・デート

「花柄は可愛すぎるか?」 「アイツ可愛くねぇからな……」  むむ、と二人で眉間にシワを寄せて悩ましい表情をする。  俺達の目の前には、可愛らしい形の花柄のティーセット。  めぼしいものがまだ見つからない魔王様の様子に、紅茶専門店の店員さん達が蒼白になっている。そうだな、王様は怖いな。無人サークルにはもう慣れた。  魔王様とのデートの時は、いつも無人サークルができるのだ。  ──遡ること数時間前。  ユリスとリューオのしょっぱい始まりが甘酸っぱく終わった恋騒動に拍手喝采してから、なんやかんやと大団円を迎えた後だ。  仕事を早く終わらせるからデートをしようと約束していた俺は、予定通りにアゼルと城下街へ遊びに出ていた。  ふふふ、念願のデートだぞ。  本当に久しぶりだ。スウェンマリナでの初デートが懐かしい。  アゼルは視察と言う名目がないと俺をデートに誘えないので、城下街とは言え純プライベートデートは珍しいんだ。ふたりっきりで出かけるなんて貴重だぞ。  とはいえ、俺が隣にいるイコールと浮かれたせいで魔力がダダ漏れのため、プライベート関係なく民衆にモロバレなわけだが……。  まあそれはご愛嬌としておこう。  お陰様でごく自然な動きで円形に避けられるので、動きやすいのが悲しい。歩く爆発物、触るな危険状態だ。  ちなみになぜ日が沈む前に大団円を迎えたのに、ナイトデートと化しているのかというと、理由は簡単。  リューオに対抗心を燃やしてしまったアゼルが、衣装ルームから出てこなかっただけである。  嫉妬心と独占欲のチャンポンを発揮しないよう、しこたま抱きしめたんだが……それとこれとは別らしい。アゼルはああ見えて勤勉で努力家なんだ。  「魔王感消して王子感出してくる」と戦場にでも行くような面持ちで衣装ルームに行ったアゼル。  目つきと闇オーラの魔王感が凄かったな。うぅん、根っから魔王なんだな。  俺も今日はちょっといい服を着てきたのだが、なんだか魔王を迎える勇者なのだからと、気合を入れなおしてしまった。  そうしてしばらく後に出てきた、おめかしスタイルのアゼル。  結論だけ言うと、流石の美男子っぷりだった。  黒のジャケットにベスト、パンツと、作りのゴツい革靴。  グレーのシャツは裾が白く折り返しがあって、手首の俺があげたのや自前のブレスがチラ見えする。  髪もオールバックで柔らかくなでつけ、冷たく見えがちな鋭い瞳を映えさせた。  アゼルはいつものアジアンテイストな格好ではなく、夜会に行く時のようなきちっとしたものにしたのだと、胸を張っていたのだが。  当然、俺の第一感想は魔王でも王子でもなく。  控えめに言っても、夜の帝王かな? だった。  だって癖で不意に目を細め、見下したような角度を取るから、仏頂面と相まって威圧感マシマシなのだ。  ホストとはまた違うが、夜のお店をいくつか経営してそうなナイトエンペラー感が大いにある。ううん、かっこいい。  この格好なら似合うだろうな、と好奇心で「俺のことを口説いてみてくれないか?」と言ってみたりしたぞ。  するとほんのりと赤くなって「そっそんな照れくさいこといきなりできねぇだろ……っ!」とそっぽを向かれてしまった。  うん、やはりどんな格好をしていても中身はアゼルだ。

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