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第222話
「シャルぅ……俺のこと好きかー……?」
「ん、好きだぞ」
「あぅ……どのくらいすき、だ?」
「ええと、それを言い表す言葉がすぐに思い浮かばないくらいには好きだぞ」
「ふふ、ぐるるる……! うれしい、うれしいー……」
アゼルはずっとにこにこヘラヘラと締まりない表情で甘えてくるので、俺はアゼルのサラサラの髪をゆっくりとした手つきでなでて返事を返す。
ふーむ。今のアゼルなら、なんでも素直に答えてくれそうだ。
子供のように抱きついて舌っ足らずなテンポで話すアゼルは、シラフの本人が見たら絶叫してふさぎ込むかもしれない。
「アゼル、ご飯はもういいのか?」
「ふふーむねがいっぱいだ、シャルを食べた、おれ……、うまかった、んふふ〜……」
「うぅん、異世界人の血だけではお腹いっぱいにならないだろう……」
「なるー……だってうまい、おまえはうまい……、お前の血、好きだ、好き? そう、おれはすきだ、シャル……すき、すき、すきー、シャル〜しゃるぅ……すきだー……」
「ふふふ、俺もアゼルが大好きだ」
「うぁぁ嬉しい、嬉しい、うれしい」
本当にかわいいなコイツめ。
なんとなく仕組みがわかったが、思考そのまま口からダダ漏れなのだな。
嬉しい、好き、かわいい、シャル、を繰り返しながら、アゼルは俺の胸元に鼻先を埋めてチュウ、とキスマークを咲かせはじめた。
髪が当たってちょっと擽ったい。
機嫌がよすぎて鼻歌まで歌い始めた。なんだこのかわいい生き物は。魔王様だ。
とても素直なアゼルをよしよしとなでくりまわして可愛がりながら、俺はなんとなく悪いことを考えてしまった。
弱ったな、俺はアゼルを愛してどんどんズルくなる。邪な俺を許してほしい。
それからもうキスマークだらけで、胸元がちょっとした発疹状態だからそろそろ勘弁してくれ。
「ン、アゼル、ちょっと聞きたいんだけど、いいか?」
「んー……? いいぜー、なんでも、俺はなんでも、答える。シャルが好きだからなー……痕付けるとこない、んんぅ……」
「あッ、こらこら乳首を噛むな、なにもでないぞそこは。じゃなくて、俺の嫌なところや直してほしいところはあるか?」
「ぅくぅ、? やなとこ……」
アゼルは吸い付くところがなくなってきたので俺の乳首を舐めていたが、頬をすり寄せて思案し始める。
いけない、髪が乳首に擦れてまずい。今日はもうしないぞ。
「シャルのやなとこ、やなとこあるか? ないと思う、でも、ぅあー……俺以外に好かれるとこやだな、他の人に触られるのもいやだ、触るのもだめだ、んと、あんまりたよってくれない、いやだー……んー……後は、犬扱い、金受け取らない、プレゼントいっぱいは喜ばない、だめだめ、シャルはだめだめだなー……」
「だ、だめだめか……」
「んーん、こういうのはちがうから、やなとこねーよー……でも今言ったの、シャルにナイショ、な?」
「勿論ナイショにするとも。……? 俺が本人の場合はどうやってナイショにすればいい?」
「んむ、しーってすればいいだろ? みんなやってるやつ、こうだぜ」
「しー」
二人でしーっと唇に指を立てると、アゼルは満足げにニコニコと笑った。よし、ナイショだな。
アゼルは俺のことを大事にしてくれるので、言ってくれるようになったがまだ不満はあるのでは、とズルい俺がこの機会に聞いてみたくなったのだ。
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