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第392話

 精霊族は魔力でも聖力でもない、霊力と言うものを持っているらしい。  なので魔力がないのは、当たり前だという。  そこでかねてから疑問だった「なんで人間は魔力なんだ?」と聞いてみることに。  魔界のウィ○ペディアなライゼンさんは、紅茶を飲みながら教えてくれた。  手が震えているぞ。 「人間は、霊力以外の両方が使えますよ。リューオさんが聖剣を持っているでしょう? 彼は特別、聖力が大きいはずです。私達魔族にはわかりませんが……」 「そうなのか。でもその二つなら、人間は嬉々として聖力を主に使いそうだが」 「それはあのボンクラ天使達の仕業です。聖力は聖なる力なので神職以外の人間には使わせないよう、彼らが裏操作をしたからですね。人間が天使のような清涼に見える生き物を尊く感じるのは、天界が地盤を固めただけなので」 「なるほど……太古の昔から人間は神の名のもとに、都合よく魔族を削るコマにされていたのか……」 「うぅん、数がすぐ増えることと、器用なのが人間の利用されやすいところですから。まったく……魔族は悪でもなんでもないただの一種族だと言うのに……。天界のゲス共を全てレアステーキにして、皮膚の焦げを剥してやりたい」  なんだか物凄く不穏なセリフが、絶対に言わない筈の人の口から聞こえた気がする。  俺も聞き間違いが多くなってきたな。  ライゼンさんほど穏やかな魔族はいない。  俺は耳掃除の頻度を上げると決める。  なにやらタローに「超光属性の英才教育じゃねぇか」とツッコミを入れているアゼルを尻目に、ライゼンさんと今後のことを、大まかに纏めることにした。  灰から生まれる炎の鳥であるライゼンさんは、精霊族に近い魔族だ。  タローのことは比較的、魔族の中でもよくわかる人物だろう。  紙を取り出しテーブルに置いて、いつかの臨時教師設定を考えた時のように、二人で物事を書き出していった。 「あぁん? じゃあアイツの話でかわいい魔王がと言っていたから、俺はまおちゃんなのか?」 「ぴぃ! ぴぃ〜!(そうだよ〜! しゃるがよみきかせてくれたお話でね、かわいい女の子は赤ずきんちゃん。ちゃん! かわいいまおーは、まおちゃん〜!)」 「フンッ、コレだから子供は駄目なんだ。俺もシャルもお前の男親……お父さんなんだから、俺はパパに決まってるだろうが」 「ぴぃ? ぴゅぅぅ?(パパ? しゃるおとうさんと、まおちゃんパパ?)」 「ちゃんをやめろちゃんをこのスットコドッコイ!」 「ぴ! ……ぴ?(すっことっこい! ……ってなに〜?)」 「アホ、すっことっこいはなぁ……、……? すっことっこいってなんだよ」 「ぴ〜(わかんない〜)」  ──その向かい側で神妙な顔をするアゼルとピィピィ鳴くタローが謎の〝すっことっこい〟について考えている。  しかし答えに心当たりがないのと、端的に二人共かわいらしかったので、そっとしておく俺だった。 「……全て聞いている私からすれば、ここにはすっことっこいしかいませんよ」 「「お母さん、わかるのか?」」 「ぴぃっ!」 「さてこちらに取り出したるは? そう! 鏡です! 答えがわかったら積み木のおもちゃを孵化祝いに差し上げますので、魔王様とタローはあちらで大人しく遊んでいてください!」

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