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閑話 ガドと愉快な仲間達(sideガド)

 クックック。ヤッホウ、俺だぜ。  って言ってもわかんねェよなァ。ゴメンな?  俺はガードヴァイン・シルヴァリウス。  毒殺に定評のあるクールでスウィートな空軍長官だ。  気軽にガドって呼んでくれよォ。  尊敬と親しみと、たっぷりの俺が好きってぇな愛を込めて呼ぶんだぜ。  そんな俺の義理──というかメンタル的な姪っ子であるタローが生まれてから、そろそろ半年近くが経つ。  卵から生まれる魔族的にはもういろんなことができる年頃だ。  ま、わかりやすく言うと、赤子向けの小さな学校へ行っても大丈夫なくらいなんだよなァ。  ちまこいなりで魔族からすれば異常に情緒の学習が速いのは、タローが精霊族だからだぜ。  精霊族は親なしが半分くらい。  なんで自己学習しねぇと、やってらんねーのよ。  だからだが、他人の感情に興味ない奴らが多いんだ。ほぼ他人事扱い。  奴らは自然ラブのトンチキ集団。  人間で言う宗教が自然や神話、言い伝えである信仰心あつーいナチュラルな種族だ。  天使とは違うベクトルで我が強いだけで悪い奴らじゃねぇから、魔界ともそこそこ交流がある。  天界とみたいに上っ面でもねーぜい。  殺し殺されするけどな。それはどこでもだろうよ。  んで、その精霊族であって感受性豊かなタローだが、両親を筆頭におもしろおかしい魔王城のメンツに囲まれてるせいでな。  自分の気持ちをよく表し、他人の気持ちを汲もうとするイイコに、すくすくと育ったのである。  パパと違ってコミュニケーション能力も抜群だし、年齢的にも問題なく言葉も覚えてんだ。  それ故に、魔界のだけど、近々タローは学校に行くことになった。  立ち位置を表すと、パパがクドラキオンと異世界人で、ママが不死鳥だ。  オジサンが俺なのでヒュドルドな、名称不明精霊族のタロー。  つまり魔王城ファミリーはハチャメチャメンツで、一般常識はイカレっぱなし。  文字はまだあいうえおくらいしか覚えてないし、同年代の友達もいねぇだろぃ?  ならこれを機にちゃんとしたトコで学んだほうがいいって結論になったのよ。  長くなったがそういうことだ。  経緯がわかれは話を戻して、今日は休みのご機嫌な俺に注目な。  引率は俺に任せろよ〜っとタローを背にのせてウキウキと学校のある街へ、空中散歩を兼ねた必要雑貨のショッピングに向かっているんだぜ。  竜の姿でビュゥゥゥ、と風を切って空を飛びながら、俺は鼻歌交じりである。 『んっんー。いつもより特別ゆっくり飛行してるから、変な筋肉使ってる気がすんよォ』 「んっん〜っ。がどくん、がっこ、もうちょっと?」 『おー? ま、フォレクスリールは城下町よりいくらか遠いかんなァ……でも乗り合い馬車より、俺は断然速いんだぜ。もちっと待ってな?』 「うんっ、待ってるっ。しゃる、うごくまえに五つかぞえてかんがえることと、がどくんのゆうこときくんだぞって、ゆってたもんね〜」  俺の竜冠の裏に隠れて風を受け流し角にしがみつくタローは、元気にイイコのお返事をした。  クックック。  シャルの躾がいいのとタローの性根が素直なもんで、こりゃあ一日保護者役は楽だ。  親経験はなく、シンユウシャのように子供の世話なんてしたことはない。  けれど好奇心旺盛で構いたがりの俺としちゃ、タローの世話はベリーイージーで楽しいのだ。  まだ俺が触っただけで死ねる毒を全身どこの皮膚からでも滲み出せるなんて、タローは知らない。  でも知っても変わらず慕ってくれりゃァ、イイけどな。  俺だってうっかりすることもあるから、怖いのは本当だ。  全部わかってて初対面で俺に触ってきたやつなんて、シャルくらいだぜ。  あんなヤツはとびきり貴重。 (ン〜。タローに怖がられちゃ、遠心力で遊ぶ相手が減っちまうなァ……)  然程心配してないが確かな心配を思うと、尻尾がグネリと空をうねる。  しかしするだけ無駄な心配だから、さっさと不安は霧散させた。  ムフフ、悩んだりしねーのよ。  俺の背中に他人を乗せたのは、タローで二人目だったりする。  一人目は当然、お気に入りの虚弱人間──シャルだ。  いつでも乗せてやるって言ってんのに飛ぶとアイツはすぐグデグデになるから、秘密基地に招待できてねーんだぜ。  シャルは毒を怖いと認識した上で、全く俺自体を怖がらない男だ。  タローもそうだと俺は嬉しいし、ウキウキすんだよな。子供に怖がられたら、やだぜ。

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