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第446話(sideタロー)

 ♢  こんにちはっ。  私はりてぃたろと・ないるごーんというの、です。  えへへ、たろーだよ。  よろしくお願いしますっ。  あのね、ご挨拶はちゃんとするんだよとしゃるは言っていたんだ。  私はしゃるがとっても大好きだから、言いつけを守るよ。  それで今日はね、がどくんとお買いものに来たんだ。  私、がっこうに行くんだよ。  だからいろんなものを買いに行かなくちゃってなっちゃった。  でもしゃるは空を飛べないから、がどくんが連れて行ってあげるって言って、私を乗っけてびゅーん。  がどくん知ってるかな?  大きな竜になるんだよ。かっこいい!  私にも翼があるけどまだ飛べないんだ。  だからいつもはしゃるに肩車してもらって、お城をお散歩してるんだよ。いいでしょー。  しゃるかまおちゃんがいないと泣いちゃう私でも、がどくんやゆんちゃん達がいれば大丈夫。  それに魔界は暖かい人がいっぱいだから、あんまり泣かなくなったよ。  だって絶対むかえにきてくれるんだ。 「──だからね、わたしはがどくんちょーかんをまってます。……ぐすん……」  ズビ、と鼻水を啜り、溢れそうな涙も耐える。顔はぐしゃぐしゃだ。  お買い物にきたのに、どうして私は知らないお店の前で座り込んでいるんだろう。  目の前の通りを歩いていくのは、私の知らない魔族さんばっかり。  えっとね、その……はじめましての街で、がどくんとはぐれてしまったみたいなんだね。  私は精霊だから魔力がなくって、はぐれちゃったら見っけてもらえないの。  だからしゃるはくれぐれもがどくんから離れちゃだめだよって言っていたし、がどくんも自分で歩いてもいいけど離れちゃだめだって言っていたんだ。  けど、約束破っちゃった。  街はとっても楽しくて、いろんなものがいっぱいで、私は五つ数えて考えるのを忘れてしまったのだ。  がどくんがお金を払っている間にお店の外で面白そうなことをしてる人達が見えたから、すぐ戻ればいいと思って出てきちゃったの。  そしたらあれもこれもって気になって、気がついたら戻れなくて、めそめそしてるんだよ。  私はがどくんを探しに行こうと思ったんだ。  だけど考えないといけない。  なので今度はちゃんと五つ数えて考えて、迷子のお話を思い出した。  迷子になったらその場にいること。  シャルがそう言っていたのを思い出し、どうにかじっとしている。  じっとしてると寂しくなってくるの。  がどくん、私のこと見つけてくれるかな。忘れてお城に帰ったりしないかな。  しゃる、会いたいな。  とっても強いまおちゃんなら、きっと私をすぐに迎えに来てくれる。そうだったらいいな。  じわじわと涙が滲んでくるけれど、一生懸命我慢する。  約束破ると、こんなに寂しくなるんだね。  私もう絶対約束破らないから、誰か助けてってお祈りをしたくなる。 「ぐす……がどくんごめんね……たろーここだよ……っ、まってるよ、ちゃんとまってる……っ」 「──やぁ、お嬢ちゃん。一人かい?」 「うぇっ」  そうして膝を抱えてしゃがみこんでいると、急に頭の上で男の人の声が聞こえて、私は驚いて顔を上げた。  目の前で私をのぞき込んでいるのは、優しそうな男の人だ。がおがおくらいのお兄さん。  どこにも変なところはないし、怖くないから悪い人じゃないと思う。  悪い人だとがどくんを呼ばないとだもん。  それによく見ると男の人はがどくんと同じような土色の尻尾と角が生えていた。  この人はきっとりゅーじんさんだ。  りゅーじんさんはニコニコと笑って、首を傾げる。 「シルヴァリウスはどうしたのかな? もしかして迷子?」 「し、しる……? わたししらない……えとね、こんにちは、たろーといいます。まいごだよ、でもねっ、すぐがどくんがきてくれますっ」 「こんにちは。ガドくんね、ふふふ。うんうん、シルヴァリウスって言うのはガドくんのことだ」  私がちゃんとご挨拶をすると、りゅーじんさんはがどくんの名前を教えてくれた。  がどくんはがーどばいん・しるばりすって言うんだって。かっちょいい。

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