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第457話

 心做しか頬をなでる風も心地いい。  いつもは猛スピードのガドの背で強風に耐えているんだが、アゼルのガードによってそよそよとそよ風程度の風圧である。  快適な空の旅で、俺の脳内はたっぷりの尊敬と感心、それから目からウロコだった。  なんというかあれだな……。  三人寄れば文殊の知恵、じゃないが、一人で立ち向かうより断然素早く対応できるし、安心感があるな。  この〝目的達成目前でウキウキの竜人達にスピード解決で目にもの見せてやろう作戦〟で、俺の役目はタローの救出である。  隠密スキルのある俺なら危なげなく、見つからずにタローに近づけるだろう。  タローを奪還するまでアゼルは物陰で控えつつ、影縛りの魔法をじわじわ広める。  そしてガドが会話をメインに、竜人達の注意を自分に逸らす手筈になっている。  俺が人質を奪う前にドーンしたとしても、タローを道連れにされると困るのだ。  アゼルがいないと物量で再敗北な上に、無事ではすまない。  ガドがいないと、そもそも近付けない。  誰が欠けても、弊害がある。  成功したってきっと怪我をしていると思う。  徒党を組んだリンドブルム達が格上のガドを負かしたように、仲間がいれば無傷で完封できる作戦が、スキップしながらやってくるのだ。 (わかっていたが、信頼する誰かに頼ると物凄くスムーズにことが進むのか)  知っているのと実感するのとは、また違うな。強く納得する。  今日俺は改めて、愉快な仲間達のありがたさを思い知ったぞ。  ちなみにポイントは愉快というところだ。  魔王城のメンツはみんな愉快なのである。 「アゼル、アゼル」 「ンあ?」 「ガドが頼れと言っていた意味が、よぅくわかったぞ。多分俺達は今、無敵なんだと思う」  日々で得た素敵なことはアゼルに共有するのが、俺のノーマルだ。  素敵なこと共有し隊の俺がアゼルの服を軽く引いて話すと、アゼルは胸を張ってドヤ顔を披露した。 「ふふん、当たり前だろうが。ラスボスが仲間のパーティーなんだぜ? 俺は魔王様で、その俺が人の娘に手出ししたトカゲ共の尻尾を、なにがなんでも全部ちぎるって決めてんだから、ちぎるんだよ」 「やっぱり親バカじゃないか?」 「親バカじゃねぇ! 当然のルールだ」  フスンフスンと鼻を鳴らすアゼルは、俺と話すといつもどおりだ。  けれどやっぱりすぐに真顔に戻り、絶対に尻尾をちぎると目をギラギラさせていた。  親バカじゃないか。  むむむ。やり過ぎないように、いざとなったら止めないといけない。  密かに意気込む。  頼りになる空軍長官さんは、今はただの俺の友人。ただのガドだからな。  ただのガドの頼みを、ただの俺は引き受けたのだ。  ならばしっかりと血生臭くなく解決しないと、タローもガドもしょんぼり事件がトラウマになってしまう。  それはいけない。  俺の大切な仲間はいつも笑っていてくれないと、ソワソワしてしまう。 「絶対ちぎる。根元からブチッとちぎる」 「生え変わりに最大限時間がかかるところからちぎるのか」  アゼルの頬に髪をすり寄せながらうーんと考えつつ、フォレクスリールの方向を睨む。  裁判の準備をしているとはいえ、裁判を通さない判決方法もある。  それは魔王が独断と偏見で裁くこと。  魔王は民を守る幹部であって、唯一その場で彼らの処刑ができる絶対君主だ。 (やはりいけない。アゼルが竜の尻尾をおおきなかぶを引っこ抜くようにちぎる姿なんて、タローに見せられない)  しばし思案して結論に達した俺は、なんとかアゼルに代案を訂することにした。 「アゼル、ちぎるのはタローの情操教育に適してない気がする。トラウマ量産は、良くないと思うんだ。つまり流血沙汰は良くないな」 「じゃあ万が一タローが血の一滴でも流して俺が血の匂いを嗅ぎつけたって言ったら、シャルはどうすんだよ」 「んんと、それはリンドブルム達全員を正座で並べてお説教をした後──なにがなんでもタローの怪我と同じところをグーでぶん殴るぞ」 「やっぱりお前が親バカだろうが」

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