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第484話

 ニコニコと明かされた衝撃の事実発覚に、俺は思わず目を丸くする。  アゼルに恥ずかしさを知らしめようとした意地の悪い仕返しのはずが、なんてこったい。  既に変態具合が知られていた、驚きのパターンだ。  聞いていないぞ。  また負けてしまったじゃないか。うぅ。  驚く俺を見つめるキャットは訳知り顔でうんうんと頷き、ニコーっとタローを彷彿とさせる子犬のような笑顔を見せる。  これは……嫌な予感だ。 「ご安心ください! 魔王様はシャル様が大変に愛しくてらっしゃるので、機会があればお話をしてくださるって言ったでしょう? お聞かせいただいたお話から滲み出るモノがありますので、我ら幹部は大方お察しフェイスで把握済みです!」 「くっ……! やはりかっ、悔しいぞ……! 結局俺ばっかり恥ずかしいじゃないか、アゼルめ……!」  それみたことか。  やっぱり嫌な予感は的中だ。  イイ笑顔で親指を立てられた俺は、へにょっと悔しさからテーブルに額を預け、すぐにガバッ! と起き上がる。 「アゼル、いけない旦那さんだ……っ。昨日はアンパンさんに喧嘩腰だったくらいヤキモチをこんがりと焼いて、甘えてきていたのにっ」 「え……!? 魔王様はパンと戦うのですか? アンコは敵ですかっ?」 「んっ? いやいや、アンコは仲間だぞ。愛と勇気も友達だ。アンコに罪はない」 「おおっ! アンコと愛と勇気は友達ですね! わかります! 強い味方、告白に役立ちそう……それもメモしておきます!」  アンパンさんに敵意丸出しな昨夜を話すと、キャットはそれを真面目に考察し、メモをとった。  対する俺はここにいないアゼルに完全敗北している事実を受け入れ、仕返しを諦めることにする。  嫌がらせのお返しは置いても、たまには俺もアイツを恥ずかしい気持ちにさせたいんだけどな。  最近アゼルはメンタル強度が上がって、俺に甘えるのもお手の物だ。  俺は前述の通り顔に出ないが意外と臆病なので、アゼルに好かれていたいし、捨てられやしないかと不安にもなる。  それはまぁ仕方ないのだ。  どれだけ好きだと言われても、何度困難を乗り越えて抱き合っても、いつまでも際限なく愛されたいし愛したい。  これはずっと変わらないことだ。  しかし不安の数だけ安心がある。 (ふむ……今日のアゼルは、きっととても疲れて帰ってくるだろうから……うん)  甘さ補給がてら、俺もキャットを見習って好きな気持ちをたくさん伝えてみようかな。  少し考えて、いいことを思いつく。  アゼルを甘やかす計画だ。  近頃足りてないだろ?  俺の愛がイマイチ伝わってないと思う。  キャットが行動に出なさすぎと言うと言うことは、アゼルにだって伝わってないわけだ。  そうして熱い決意を固めていると、メモを取っていたキャットが気合十分に顔を上げ、俺をじっと見つめた。 「シャル様! こっ、こここっ、ここっ!」 「コケコッコー?」 「はい! コケコッコーの練習相手になってください! ……ン違うゥッ!」 「ええと、冗談だぞ」 「冗談ですか!?」 「本当はピヨピヨだ」 「ピヨコですかーッ!?」  どうしよう。とても楽しい。  俺は声を上げて笑ってしまった。  真剣なキャットを茶化してはいけないのに、つい楽しくなってしまう。  顔を真っ赤にして真顔で、恐らく〝告白の練習に付き合ってください〟と言おうとしているからな。  ちょっと緊張を解そうと冗談を言ったら、反応がよかったので……つい、だ。 「あはは、ごめんな。お前があんまりかわいいから、意地悪をしてしまった。告白だろう? ちゃんと練習相手になるとも。さぁ……どこからでも、かかっておいで」 「ぐおおお……! 硬派に見えて天然! そしておちゃめ! 笑顔! 頭よしよし! これが師匠の力か……!?」  うん? うぅん……それはイマイチなにを言っているのか、わからないぞ。  驚くキャットの頭をなでてやると、真っ赤になって冗談の仕返しをされてしまった。  キャットは照れ屋さんだからな。  俺のクセだからなでなでは許してほしい。  兎にも角にも、告白予行練習だ。

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