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第524話
気を取り直して、ゴホンと咳払い。
ターゲットをリューオからイズナに変えて、つぶらな瞳と見つめ合う。
「それで慣れているから、もしかしたら危険かもと思っている。でもそれ込みで、ウェルカムなんだ。俺の精神衛生上、ここで切り捨てる方がよくない。要するに身勝手な判断だな。でも騙されたくもないから、今から脅すぞ?」
「きゅ、きゅ?」
決して俺は優しさとか慈愛のみで動いているわけじゃないと懸命に訴え、困惑するイズナに言い聞かせた。
そしてリューオの言うことと騙されたくないという欲求も兼ねて脅すために、俺なりに怖い顔を作る。
「ふっふっふ……俺は俺のためにお前をディナーにご招待する、いい人ぶった偽善者だ。クソ野郎だぞ。魔王の妃は怖いのだ……」
「…………」
「ふふふふふ……もしもイズナが不審者ならば、逃げるのは今しかない……。俺は騙されたと気づいたら、すごくしょげつつも向かってくる敵はドーンする……怖いのだ、極悪非道なシャルさんだからな……」
「……旦那、たいそう不器用な人なんですねぇ」
んん、なぜ怖がってくれないんだ。
そんなしみじみと分析しないでくれ。恥ずかしい。
慰めがてら小さな前足でポンと膝小僧を叩かれたけれど、俺はめげずにクワッと牙を向いて威嚇する。
それも効かなかった。
嘗められているのか?
困り果てて凶悪フェイスの申し子であるリューオを見上げるが、黙ってため息を吐かれた。
リューオ。どうしてそんな残念な生き物を見るような顔をするんだ。
俺だって、無条件に誰彼と受け入れているわけじゃない。
敵とわかれば殴り掛かるし、切りかかる。ちゃんと心配をかけないように警戒もする。
なのになぜお前たちは俺を生暖かい目で見るんだ。恥ずかしいぞ。
「なんと言うか、俺が悪うごさんしたってもんでぃ。食料を集ろうと嘘吐きましたよう。なんも裏はねーんで、俺もディナーに混ぜておくんな」
「しゃーねえ、素直に謝るんならお肉様を分けてやらァ。そんかし敵対したら膾に刻むかンな。俺はまだ信じてねぇから心得とけよ」
「合点よぅ」
そしてなぜ俺抜きで丸く収めるんだ。
俺を馬鹿だと思っているリューオに見直してほしかったのに、あてが外れに外れてしまった俺は、腑に落ちなくて肩を丸める。
(……やっぱりお前たち、仲良しじゃないか?)
余計にアゼルと、それからタローが恋しくなった瞬間であった。
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