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第547話※

 上掛けの中で身動ぎ、枕と手紙に額を押し付けるようにうつ伏せになり、尻を上げる。  こうしないと中には満足に指が入らない。  プクリと腫れたしこりだけでなく、奥でも感じられるように刷り込まれているのだ。  指ではアイツのモノに遠く及ばないが、深いほうが満たされる。  入口の輪の締まりとは裏腹に柔らかく拡がる媚肉をかき分けながら、もう片方の手で射精したばかりの肉芯を擦り上げた。 「っ、ふ……っ、…っあ……んぁ……」  未完成の魔法を放つように中に挿れた指先から魔力を流し込むと、粘度の高いローションのようなものが、ゴポッ、と溢れ出す。  これは目に見えない魔力が魔法として具現化する途中の、出来損ない。  昔、魔法を覚える訓練の時に量産していた。  まさかそれをこうして潤滑油代わりに使うとは、夢にも思わなかったが。  クルクルと円を描くように縁を広げ、ヌメリを足しながら指の本数を増やす。  三本の指を飲み込む頃には、キツく締まっていた肉壁を押し拡げられる圧迫感に、萎えたはずの陰茎が蜜を垂らして昂っていた。 「は……っ、ぁ、ん、っふ……ん……」  豆のように腫れたしこりをノックすると、連動してそれがビクンと震える。  腸液と混ざりあった生ぬるい液体が、指と肉の隙間からトロ、と零れた。  シーツが汚れてしまうことはわかっている。  けれどやめられない。明日リューオにバレないように洗濯しないと。 「あ……っあ……あ、ぅぁ……っ」  淫猥な行為にふけっていた。  いくつかの糸は切れていたと思う。  声を出したほうが気持ちがいいと覚えている俺は、次第に乱れる呼吸と溢れる喘ぎ声を抑え込まなくなっていく。  自分が出した官能の滲む声が鼓膜を震わせると〝気持ちいい〟ということを改まって自覚してしまう。  それが快感を増すのだ。  同時にクチュクチュと粘液を擦る音が聞こえ、大腿を伝う雫が肌をなぞり、ゾクゾクする。  けれどすぐに──指では到底届かない最奥が、切なく疼きだした。 「はぁ……っ、あ、っ……届かない……っ」  ユラユラと腰が揺らめく。  無意識に自分の指に向かって臀部を突き出すが、細く短いそれは、いつも中をかき混ぜているモノとは比べ物にならない。  手の動きは大胆になっていくというのに、いくら襞を引っ掻いてみても満たされているというあの感覚がしないのだ。  ──あぁ、こんなのじゃ足りない。  俺の中を我が物顔で蹂躙するもっと大きなもので、張り裂けそうなくらいいっぱいにしてほしい。 「はっ、は……っあ、ぜる、アゼル……っ」  ジワ……、と目尻に水滴が滲む。  いないのはわかっているのに、俺は手紙に頬を擦り寄せ、たまらなく強請った。  鼻腔をくすぐるアイツの残り香。  なのにアイツはここにいない。 「アゼル、なんで……っ俺、あ、っ……はぁ……っ」  どうしてここにいないんだ、と内心で責め立てることを、やめられなくなる。  汗や涙、唾液やはしたない淫液の混ざる淫靡な空間で、俺は独り、自慰行為に溺れていた。  本当なら、ここにはアゼルがいないといけないのに。  中途半端に被っていた上掛けが滑り落ち、月明かりの影で顕になる肢体。  熱を帯びた体に触れる彼の手がないことに、どうしようもなくもどかしい気持ちが湧き上がる。  いないのはわかっている。  わかっているが、呼ばずにはいられない。  一人だからこそ恥ずかしいことも言えるし、できるのだ。 「んあ、あっ……アゼル、ぅ……っなんで、ぇ、挿れて、くれ、ふっ……」  手紙にチュ、とキスをして、内壁を意識してキツく締めつけ、指の形がわかるくらい襞を蠕動させ、熱く脈打つ屹立を手淫し、丸裸の自分をさらけ出す。  俺はせり上がってきた絶頂に向け、アゼル、アゼル、と甘く名前を呼びながら、手の動きを早めていく。 「欲しい、ん……っぁ……アゼル、あぜる……っ中、寂しいから……抱いて、くれ……」 「──シャル」 「っ……!?」  そんな空間に──突然、求めた男の声が聞こえた。

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