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第548話※
ビクッ、と体が跳ね上がるのと同時に手を掴まれ、中に挿れていた指が全て引き抜かれる。
「ひ、っあ、アゼ、なん、っ」
「ふふん。お前があんまりかわいく俺を呼ぶから、化けて出たんだぜ」
「あっ……!」
機嫌よくそう告げるアゼルの声が背後から聞こえて、散々自分で弄ったことでトロリとふやけた入口に、ヌルリと待ちわびた塊が押し付けられた。
衣服を乱すのもそこそこに、既に堅く勃起しているソレがゆっくりと中に押し入ってくる感覚。
逃げられないように腰を掴まれ、ズズ、ズッ、と先端、首、そして一番太い部分と当てつけるように挿入される。
「ふあ、ぁ、ぁ……っ」
ゾク、と背筋が粟立ち、俺は枕にしがみつくようにして挿入の快感に打ち震えるしかない。
(ば、化けてきたわけないじゃないか……!)
アゼルが内部を押し拡げていくだけで、こんなにもたまらないのだ。
これが幽霊や幻影なわけがない。
締めつけに呻く吐息も、浮かれた声も、触れる体の体温も、繋がる体内の肉棒も、嘘偽りなく現実に決まっている。
「ダメだ、アゼル……っ」
「んー……?」
「イく…イ、く……っは、あ……あぅ…っひ、ぅぅ……っ」
「っ……ふ」
か細い嬌声とともにふるりと唇を戦慄かせ、ビュク、ビュク、とシーツに吐き出す精。
全長を受け入れるのにいつも苦労する屹立を半分ほど挿入された時点で、圧迫される前立腺と擦れる内壁に、俺は張り詰めたモノの先端から白濁液をこぼした。
挿れられただけなのに恥ずかしい。
カァァ……! と耳まで朱が走る。
「はっ、イク時ヤベェ……腹の中トロットロにしやがって、スケベだな、シャル」
「やっあぁ、っ……ぁあっ」
けれど射精の余韻に浸る間もなく残りの半分が根元まで埋め込まれ、同じ唇から甲高い悲鳴があがった。
ゴリッ、と最奥を重く穿たれるのを皮切りに激しいストロークが始まり、内臓ごと体が揺すられる俺はただの肉の塊にすぎない。
同じく久しぶりのセックスでアゼルも余裕がないのか、機嫌がイイのは伝わるものの口数少なく快感を貪る。
「そんな激し、っあ…っあ…うぁ……ッく、ひ……っ」
「ふ、それはお前が悪いぜ、結構前から見てたから、な」
(け、結構前から見られていたなんて、早く声をかけてくれればいいのに、あんまりじゃないか……っ?)
いつからいたのかわからないが、とりあえず俺のひとり遊びはしっかり見学していたのだろう。
上機嫌なのも頷ける。
俺は今すぐ墓穴に飛び込みたいが。
「クックック、かわいいが過ぎる。まあ俺のシャルだから当然だな。エロくてかわいいお前は最高だ」
「ん、っあ……っひぁ……っせ、背中、やめ、ン、ん……っ!」
「全世界に見せてやりてぇ。でもその後記憶を消すか、眼球を抉ってやる」
見えない尻尾が、パタパタとご機嫌に振られているのだろう。
アゼルは俺への感情が抑えられないらしい。
不意にうなじへ噛みつかれて「ンぁっ」と喉をのけぞらせると、弄ぶように傷口を舐められた。
アゼルは夜着の下に手を滑らせて背中や脇腹を指圧しながら、うなじに噛みつき催淫毒が入らない程度に俺の血を啜る。
角度やテンポを変えてズッズッと中を擦られているのにそんなことをされると、達したばかりの陰茎がまたトロトロと透明な粘液を滴らせて勃ち上がる。
そのうちにアゼルが俺の中に欲を吐き出したが、一ヶ月ぶりの再会が一度で済むわけがない。
一度ズルリと引き抜かれ、支えられていた腰を解放されると、支えを失った俺は糸が切れたようにシーツに沈んだ。
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