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第21話
『――小生が、この子を守って、育てていきます。大人になるまでは。空薇、小生はあなたに出会えて、とても幸せです。ありがとうございます。』
一ヶ月前亡くなった私のママが、私に遺した手紙はそうして終わった。
片親だった私にとって、母親でもあり、そして父親でもあったママ。
ママは、ずっともう一人の親について、語りはしなかった。
意地悪だと思っていた。
だけど、違う。
話せなかったんだ。
一ヶ月前、ママは私が二十歳になったことをとても喜んでくれた。
私の結婚式も、とても喜んでくれた。
ママに、結婚式の話を聞いたけど。
ママは、笑って誤魔化すだけ。
でも、今、こうしてママの手紙を読んで。
遺してくれたテープを聴いて。
ママのことがよくわかった気がする。
「っ、ママぁっ」
ママが、私に対してよく謝る理由がわかった。
けど、謝らなくて良かった。
ママが、頑張ってくれたから。
私は、他の人たちと同じように、学校に通ったりできた。
友達と遊ぶことも。
ママのお陰なんだ。
もっと、もっと、ありがとうって言えば良かった。
「ひっ、うぐっ、うわぁぁぁぁあああああんっ」
ママへの思いが。
抑えていた思いが。
全部全部、涙となって出ていった。
⊿
少ししてから、私の涙は止まり、少し落ち着いた。
ずっと悲しんだままではいけない。
少しは元気出したりしないと。
ほんの少し気合を入れると、少し離れたところで、旦那が呼ぶ。
「空薇、そろそろ行くよ」
「うん。わかった」
ママの手紙を仕舞い、私は旦那のところに行く。
「お待たせ」
「ん。お義母さんの遺品、何か見つけた?」
「うん。ママのお話や、私が生まれてくるお話があった」
「そっか……。それは、とても大切な物だな」
旦那は私の頭を優しく撫でる。
「今度、俺にも聞かせてくれないか?」
「良いけど、壮絶って感じだよ」
「そうなんだ。でも、ちゃんと知りたいよ」
「うん?」
「……俺が、お前を守るんだから。当たり前だろ?」
「……オメガとは思えない台詞ね」
私はそう言って、旦那を軽く小突き、笑った。
旦那は、照れるように笑った。
《了》
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