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第20話
「ありがとうございます。これで、全部足ります」
小生はそう言って、刑務官にお礼を言います。
刑務官は、何か言いかけましたが、何も言わず頷きました。
小生は、小さく笑って、書き溜めた手紙と。
録音したテープを入れた、封筒を刑務官に渡します。
「これ、届けてくれませんか? 娘には、全て知ってほしいので」
「……わかった」
「もしも、娘に会ったら、伝えてくれませんか? 愛している、と」
「…………」
刑務官は頷き、小生のいる牢屋の前から立ち去りました。
⊿
あれから、たくさんのことがありました。
娘は結婚し、二十歳になりました。
それを祝った後、小生は警察署に行きました。
罪を償おう、と思いました。
どんな理由であれ、人を殺しました。
それも、アルファです。
きっと死刑でしょう。
「はぁ……」
ため息を吐き、小生は懐から一つの瓶を取り出します。
その中には、薬が入っています。
ドキドキしますが、やるしかありません。
もう、生きていても、どうしようもありません。
それに、小生は死刑ですから。
小生は、ニッコリ笑って、瓶の中にある薬を飲みました。
薄れゆく意識の中で、小生は思います。
――ああ、本当に。
朱音さんとの恋は、甘いようで苦い、弾けるような恋でした。
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